福祉改善を阻むオヤクショ思考


公開 (UL): 2024-03-25
更新 (UD): 2024-03-25
閲覧 (DL): 2024-12-21

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時事川柳 News Senryu

パーティー券  
民意も一緒に
  蹴り返し
Kick back both party tickets and people's opinions.

 自民党の一部(?)派閥がパーティー券のノルマを上回る分の売上げを議員にキックバックしておきながら政治資金収支報告書に不記載だった問題が広がりを見せている。なるほど,こうしたことが党内で常套化していたのだとすれば,岸田総理はじめ同党政治家にことごとく「民意を蹴り返すクセ」が付いているのは当然という感じもする。これっぽっちも「悪いこと」と思わなかったのだろうな。そんな人たちに誰が票を入れるのだろうか。少なくとも,岸田の広島と「頭悪いねぇ」と暴言を吐いた議員を選出した長崎に「ふるさと納税」はしないことにしよう。
参考: 自民県 絶対しないぞ ふるさと税

今回はもう一句!

危機感の  
ワリに二階は
  誰も居ず
Having sense of crisis, but nobody takes shelter of 2F.

 大雨などで危機感を持ったら二階のような高い所へ避難すべき的な話を聞いたよーな気がするのだが? パーティー券のノルマ上回り分キックバックの政治資金収支報告書不記載問題で,安倍派は何人も辞任したのに,同じく捜索を受けている二階派に辞任する話があるかというと,今のところ誰もいない。総理は「危機感を持って」とか言っているらしいが,どこが「危機感」なのやら。

(⌚2023-12-19)

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A disability is trying to use and select "communication aid devices" with public subsidy. But the trader of devices explained "Assist devices for PC cannot be applied the subsidy." What? He said "Those are not treated as communication devices in the subsidy system." Japanese pubic officers are making those systems bad and wasting taxpayers' money with their wrong thinking I guess.

 最近,新たな「意志伝達装置」の導入を考えている障害者の方の試用に立ち会う機会があったのだが,業者さんの説明に少々呆れた。別にその方の説明がひどかったんじゃなくて,問題はその「意志伝達装置」のための補助制度の内容。簡単に言うと,補助の対象は「あくまでも意思伝達のための機器だけ!」という話で,パソコン(またはタブレットやスマホ)の「操作が目的」の機器は対象外……だと。普通に考えれば,そうした機器は専用ソフトをインストールすればメールやチャットができるようになるのだから,とにかく障害に対応してパソコン操作を可能にする装置であれば「意思伝達」もできそうに思うが,その装置自体が「意思伝達を目的として作られたもの」でないと「意思伝達装置」とみなされず,補助対象にならないような話。オヤクショのこうした思考は重大な弊害を孕む。なぜなら,パソコンに限らず,メールやチャット,電話のような意志伝達のできるずっと安い機器があったとしても,元々「意志伝達を目的として作られた製品」でなければ補助対象にならず,逆に,相対的にどんなに高額でも「意志伝達装置」を謳えば補助対象とされる……つまり,同じ意志伝達方法が使えたとしても「わざわざ高額な費用のかかる」税金の使われ方をされる可能性があるからだ。
 突っ込んで考察してみたい。

● もう少し詳しい経緯

 筆者は以前,障害を持つ方にパソコン指導をするため,その方が入所している介護施設まで出向いていたのだが,コロナで施設が出入り禁止になってしまい,しばらく会えずにいた。コロナが五類に移行し,最近「保護者同伴」の条件付きで第三者の面会もなんとか可能になった。
 その方が新たな意思伝達装置の導入を考えていて,補助の対象となる機器について「業者のデモがある」というので立ち会わせてもらえることになった。で,業者さんから説明を聞いて……少々呆れてしまった。いや,業者さんの説明がひどかったわけではなく,問題に感じたのはその補助制度の内容のほうだ。
 今回も含め,これまでにその方が試した「補助対象の」意思伝達装置は,どれもパソコン上で動作するソフトウエアなのだが,それぞれ「できること」と「できないこと」があった。ただ,なんだかんだ言ったってパソコン上で動作するわけだし,「できないこと」のうち,あとからソフトを追加インストールして使えるようになるなら,元の機能は限られても操作性重視で選べばいいだろう……そんなふうに考えていた。ところが,そうは問屋が卸さないらしい。簡単に言うと「パソコンを操作する機能は補助の対象外」なのだそうだ。既に何を言っているか理解されづらいかもしれないが,どうやらオヤクショの言い分は,「意思伝達装置」というのは「意思の伝達を目的に作られたもの」であり,「パソコン操作を補助する機能」は,それで意思伝達以外のこと……たとえば極端に言えば,ゲームしたり動画観たりもできちゃうようになるからダメ……ということらしい。では,なんで今回試したパソコン上で動作するソフトは補助対象なのかというと,元々が「意志伝達用に作られたソフトのセット」だからという話のようだった。
 それって,やはり極論でたとえると,ロボット型の障害者アシスト機みたいなのがあったとすると,障害者の話を聞いてメールを送ったり,それを文書に印刷し,封筒に入れてポストに投函しに行ってくれる機能「だけ」のロボットなら意思伝達装置として補助の対象となるが,そのロボットが作られた元々の目的が障害者の様々な生活支援で,たとえば食事の補助をしてくれたり,お茶をいれてくれたり,介護用の消耗品を補充したり,ゲームや会話の相手もしてくれるような多才な機能を持っていたりすると,述べたようなオヤクショの解釈だと補助の「対象外」となってしまう可能性が出てくる。おそらく,実際にそんなロボットがあったとしても,「それは別の補助制度なので,別途そちらへ申請して追加で導入する必要があります」みたいなことを言われそうだ。たとえ「意志伝達」と「生活支援」がロボットひとつで済んでも,扱う制度が別々なら,別々に申請が必要……オヤクショってそんな感じだろうね。
 にしても,そんなロボットがあるのか。ものは考えようで,たとえば手紙の場合は,わざわざ外のポストに投函に行かなくても,今は「印刷して手紙にして出してくれるサービス」を提供するサイトもあるから,ロボットが音声認識機能で文字データにしたものをそこに送れば実現する。もしその機能が,最近売られている「スマートスピーカー」と呼ばれる製品に組み込まれていたりすると,他にも電灯やエアコンを点けろなんて命令まで聞いてくれちゃったりする。ましてや,消耗品をネット通販で補充するくらい簡単なはず。既にそこまでできる可能性があるのが現実。そんな機器の持つ様々な機能の中にメールやチャットが含まれていても,意思伝達「以外に」いろいろできちゃうと「意思伝達装置」とみなされず,補助対象から外されてしまう可能性があることになる。
 この「スマートスピーカー」……1万円もしないものもありまっせ。補助なんかなくても気軽に買えるから既に使っている方もいると思う。今のところ喋れない人は使えないが,もしオプション的な機能を付加して喋れない障害者まで操作可能になっても,元々「意思伝達」が目的でないし,意思伝達「以外」もできるから,どんなに安価でも補助対象外とされてしまう可能性がある。一方で,「意思伝達用に作りました」と言えば数十万円しようと補助対象にするのが,今どきのオヤクショだ。

 で,「社会保障費が膨らんでたいへんだ」みたいなこと言っている。「だから増税」という話になるところまでがワンセットだろう。しかもそれ,現役を退いた「後期高齢者」辺りの負担は増やせないから,まず「現役で稼いでいる」人たち……ある意味「子育て世代」の負担を増やす話になる。あるいは「増税ではない」と言うために「社会保険料」を「ちょっと上げるね」的なことをする。ただ政治家やオヤクショはそれを「繰り返してきた」わけで,既に「ちょっと」どころではなくなっている。こんな政策が繰り返されるのを見れば今後の負担増も確実なわけで,それでこれから社会を担う若い世代が「子供をつくろう」という気になるのかって話。それでも子供を作る人というのは,それだけ経済的余裕のある一部の人を除けば,今後どうなるのか考えられない人たちばかりではないのか。考えずに子供ができてしまうような行為に及べば,できた子供は「想定外の負担」。自分が過ごしたい生活にとって邪魔に感じる親も多いのではないか。最近,子供が死に至るまで虐待したり,産み落として捨ててしまう親の話が増えているが,述べたようなことが背景にないだろうか。それで「少子高齢化や虐待の悪化が深刻だ!」とか言っているのが今のオヤクショ。社会保障費を増大させ,少子高齢化や虐待を悪化させる要因を自分たちが作っていると思っていないのだ。「異次元の少子化(促進)対策」をずっと続けているようなもの。

● 実機を見た感想

 今回のデモで見たのは「EIz(仮名)」というもの。また,少し前まで「DのC(仮名)」というものも試用していた。どちらも五十音表が表示され,「ア行(あいうえお)→カ行(かきくけこ)→サ行……」とハイライトで目立つ色の列が「スキャン(移動)」していき,決定され(接続したスイッチが押され)ると次は「ア段→イ段→ウ段……」のスキャンになり,入力したい文字を絞り込んで行くもの。
 以前試していた「DのC」は,とにかく固い感じで,「かな」以外の選択肢が「漢字一文字」表示。たとえば文字を消去したい時は「削」という文字(「消」ではない!)を選ぶ。その方,小さい頃に既に通常の学校から隔離されてしまっていたため,漢字の読み書きが困難。だからまずその選択肢の漢字が何を意味するか覚えるまでのハードルが高そうな気がした。しかもそれが「角ゴシック体」で,輪をかけて固さを印象づけていた。せめて書体を変えられるなどカスタマイズができればマシなのに,デモ担当の業者さんの話では,それはできないらしい。とにかく設定に柔軟性がなく,固さばかり目立つ「DのC」であった。

 その点,今回試した「EIz」のほうが柔軟性はずっと高そうに見えた。選択肢も漢字ではなく,「アイコン」の図に小さな字が添えて書かれているようなもの。図と機能の関係も分かり易そうに見えた。また,どこにどの選択肢を配置するかの変更も可能だとか。その人がよく使う機能をメインの表内にいくつか配置するようなこともできるらしい。
 そして「これはいい!」と思ったのは,連続的に動くスキャンのマークがあったこと。「DのC」は,表内で色の異なる「ハイライト部分」が瞬時に隣に移るのに対し,「EIz」では,それに加え連続的に移動する小さな三角形のマークが表示される。そのマークが表の境目の線をまたいだ時にハイライトの選択肢が移動するため,タイミングが分かり易いように思えた。いわば,最近ある歩行者用信号機で,1段ずつ光る点が減っていくものがあるが,そんな感じで,「いつ次の選択肢に切り替わるか」が把握し易くできていた。実際,その方が使っている時も,以前試用していた「DのC」より入力間違いが少ない気がした。すると修正が減るぶん,全体的な文章入力も早いように思えた。

◆ 「パソコン操作機器が対象外」の弊害

 でも結果的に,別の条件が「決め手」となって「DのC」にしようということになった。その「別の条件」のひとつが,チャットへの対応。「DのC」がメールとチャットの両方が使えるのに対し,「EIz」ではメールはできるものの,チャットを使う機能が(そのソフト内に)なかったのだ。
 「おや?」と感じる方もいるかもしれない。そう,「EIz」もパソコン上で動作する以上,チャットアプリをインストールすれば使えそうに思う。ただ,何度か言っているように,オヤクショが補助対象とするのはあくまでも「意志伝達装置」なのだ。つまり,ソフトの機能として「(意志伝達以外の)パソコン操作」ができてしまうと,補助対象として扱われなくなってしまう可能性が出てくる。パソコン上で使えるからと言って,あとからインストールしたアプリも使えてしまうと,ゲームや動画サービスなども利用可能にできてしまうため,「意志伝達装置ではない!」という扱いになり補助が付かなくなるおそれがあるわけだ。すると,特定のチャット業者のサービスを使いたい場合,意志伝達装置のメーカーがそのチャット業者と「提携」するなどでデータの通信形式を教えてもらったりして,チャット機能が「初めから組み込まれていないと」意志伝達装置として扱われなくなる……ような感じだった。

 しかしこれでは,「提携」できない業者のチャットはほぼ使えないことになってしまう。そればかりか,元々の目的である「意志伝達」をも制限されてしまう可能性が出てくるのは,容易に想像できるだろう。
 たとえば,筆者は XMPP というチャット方式を利用しているが,これは試用した「DのC」で使えるチャットとは相互にやりとりできない。ただ「パソコンを(自由に)操作する機能」があれば,XMPP 用アプリをあとからインストールしても使えるわけだから,相手の方が XMPP のアカウントを作ればチャットできる。が,「パソコンを(自由に)操作するものは『意思伝達装置』とみなされず補助対象外」となると,XMPP のチャット機能を「組み込んだ」意思伝達装置でもない限りは,筆者がパソコンを教えていた相手の方と「チャット」で通信できる環境を補助で手に入れることはできないことになる。
 その「DのC」で使えるチャットというのは,日本では同サービスを提供する業者の利用者がそれなりに多いため,使えるようにしたものと思われる。一方で,なんで筆者がその業者のチャットを利用していないのかというと,一番の要因は,その業者が度々個人情報の漏えい事件を起こしているので,信用できずアカウントを作るのに抵抗があるため。むしろ筆者に言わせれば,なんでそんな個人情報を漏らしまくる業者のサービスを障害者に使わせるようなことをするのか疑問に思うくらい。しかも,それ以前の問題として,筆者が普段使う機械で利用できるその業者のチャット用アプリがないとか,経済的事情で SMS の使える契約が困難であるため,それを利用したチャット業者の本人確認ができないなどの要因もある。だから今の段階では,筆者の側から同社のチャットサービスを使えるようにすることはほぼ不可能なのだ。
 他に多くの人がアカウントを持つG社もチャットサービスの提供があるが,やはりセキュリティに不安が多い。その点,筆者が利用している XMPP というチャット方式はどの業者とも関係なく,SMS での本人確認もないため,筆者も利用できるというわけだ。
 裏を返せば,障害者向け意志伝達装置でその業者のチャットが使えるようになっているということは,その装置を使う障害者も,SMS などで本人確認ができることを前提としているようなものだと思うのだが……身体が自由に動かせない人のための「意志伝達装置」の使用者に,どれほどそれが可能な人がいると想定したのだろうか。
 特定業者のチャットに対応していても,ほかのパソコン操作ができなければ,XMPP アプリをインストールしても使えないから,その方が何か筆者に聞きたいことがあってもチャットではアドバイスできない……そんな製品にばかり「意思伝達装置」として補助が出るのが現状だ。

 今は他にも様々な通信方法があるから,「パソコンを操作することが目的」の機器が対象から外されると,このように「意志伝達」も制限される事態が生じるわけだが,述べた通り,オヤクショの側は「そんなの知ったこっちゃない」という姿勢で補助対象を決めている実態がある。

 まとめると,「元から『意志伝達』を目的に作られた機器以外,補助はダメ!」というカチンコチンなオヤクショ思考が,結果的に障害者の意志伝達の手段を狭める要因,引いては福祉の改善を困難にして,様々な面で負担を増やしている可能性があるということ。「結果的に『意思伝達』できれば補助対象です」という考えができないのだ。そのため,一万円前後ほどのスマートスピーカーのような器具でメールやチャットができても,あるいは,パソコン操作を目的とした汎用ソフトを利用して,そこにいろいろな通信用アプリをインストールすることで様々な人と「意思伝達」ができたとしても,「意志伝達以外にもゲームや動画,音楽が視聴できてしまうからダメ!」といったような理由で,補助対象にならないのだ。それがどんなに安価な方法であっても……だ。
 その一方で,補助金目当てで設定したような上限ギリギリの数十万円もする「意志伝達装置」として作られた製品にのみ,補助金がバカスカ流れ込む制度を作っておいて,で,「社会保障費がたいへんだから税金や保険料を増やすねー」とか言っているのが,今どきのオヤクショだ。

◆ そうなってしまう背景

 おそらく,こうした対応に陥る原因は,「コモディティー化」という経済や産業界で起きている現象をオヤクショが捉えきれていないためだろうと思っている。「コモディティー化」とは,簡単に言うと「一般化すること」だが,同時に「低廉化」でもあり,そしてそれは様々なことが「デジタル化」されたことによりもたらされたと筆者は考えている。述べている「スマートスピーカー」という製品は,やりたいことを喋りかければやってくれるわけだが,そこにはもちろん音声認識技術や通信技術,そして操作対象がどのような状況にあるのかを感知するセンサー技術などの,個々に見るとそれなりに高度な技術が多数盛り込まれている。そして,それらの多くはデジタル化されソフトウエアで処理されている。その設計段階から様々な機能をソフトに盛り込んでおけば,1つの製品が様々な人に役立つ。すると,同じ製品を多くの人が買い求めるようになるわけだが,ソフトというのは簡単に複製できて,同じ機械に組み込めば同じ機能の製品が「いくらでも作れる」から,量産するほど設計にかかった経費が分散され,結果的にスマートスピーカー1台あたりのコストはかなり圧縮できる。これが「様々なことができる機器ほどコストが安くなる」仕組みで,ある意味「コモディティー化」の一面。
 たぶん,オヤクショが「いろいろなことができる製品はダメ!」とか言っている理由は,全く逆を考えているせいではないか。つまり,「いろいろなことができればそれだけ高価だろう」という発想。だから,せいぜい数万円するかしないかくらいのスマートスピーカーで「メールやチャット」などの意志伝達機能を使いたいと思っても,「ゲームや家電の制御,ネット通販もできちゃうような多機能な(高価な)製品にお金は出せない」みたいな対応になってしまっているのではないだろうか。一方で,障害者向けに特化して作られた,「意志伝達」の機能しかないような数十万円もする製品を「補助対象」にしていて,その「補助」というのは税金から支出されている。で,繰り返すようだが「社会保障費が膨らんでたいへんだ!」とか言っているわけだ。
 「コモディティー化」した産業界では,多機能で様々な人が使えるように作られた製品ほど安いことも多いのに,オヤクショの思考はデジタル技術が発達していなかった昭和時代のままということだと思う。

◆ 実質の判断を制度に組み込むべき

 障害者の症状にも依るだろうが,補助金に頼らずに,スマートスピーカーのような市販品を自腹で購入してしまったほうが,結果的に安いうえにいろいろできるんじゃないかと思うことは多い。今回も「試用」を見せてもらった「DのC」とか「EIz」などの「意志伝達装置」とやらが,どちらも価格が数十万円で,「全額補助」ならまだしも,たとえば「1割自己負担」だった場合は,結局 4~5 万円ほど使用者の負担になる。検索すれば分かるが,スマートスピーカーなら1万もしないものも見かける。機能的にも「意志伝達装置」は「意志伝達」だけが目的なのに対し,スマートスピーカーは……まぁ,製品により機能は違うだろうから調べる必要はあるが,メールやチャットなどの「意志伝達」以外に家電の制御などもできるものがあり,うまく探せば「使いたい機能」以上のものが1万円以下で手に入るかもしれない。一方で,補助対象の「意志伝達装置」は,補助を受けるためにあっちこっちのオヤクショに出向いたり書類を用意するなどの「手続きの手間」もある。実費の差である 3~4 万どころではないメリットがあると考えられないだろうか。
 ちなみに,今回その「試用」をした方は「喋れない」ので,スマートスピーカーは使えない。もちろん,障害者の症状にもにも依るわけだ。
 ただそれも,喋りかけるのではなく,スマートスピーカーをスイッチひとつで操作可能にする「スキャン式環境制御装置」的なオプションが作られたりすると,違って来る。アンテナは張っておいたほうがいい。

 注意したほうがいいと思うのは,「補助で手に入らないのなら使わない!」という人がいる可能性。聞いた話のため想像も入るが,筆者はこれまで,「簡単なスイッチの作り方」などを障害者の介護現場で何度か指導して来たことがあるのだが,そこで働いている方から聞いた話で,2~3 千円ほどのスイッチ購入に「補助の適用」を頑なに希望する方がいるらしい。でもそれ,「手続きの手間」を考慮すると 2~3 千円ほどなら市販品で近いものを直接買っちゃったほうが早くて安く済む可能性も高い。でも! 残念ながらそうした考え方ができず,補助が出るかどうかで,それを使うかどうかを決める方も,一定割合いるらしいのだ。
 そうした方々は,オヤクショが「補助対象」とする選択肢の中からしか手段を選ばないだろうから,そこに「スマートスピーカー」が入っていなければ,そうした手段があることを知る機会すらなくなってしまうだろう。そのほうが安くて便利に使える可能性があっても……だ。
 「世の中に今どんなものがあるのか」を調べる能力がないとか,製品の選定で「本当に必要な機能か,コスパや手間的にはどうか」といった「実質的な面」の判断ができない人は,少なからず存在する気もする。

 裏を返せば,そうした「実質面」で,機器や資金が有効に活かせるよう「補助制度」を変える必要があるだろうと思う。述べたように,今の制度は意志伝達「以外」のこともできてしまう「スマートスピーカー」のような製品は補助対象外の扱いだろうから,たとえその製品に備わっているメールやチャットなどの意志伝達機能で十分に間に合う人でも,補助の相談に行くと価格が数十倍もする補助対象の「意志伝達装置」の導入の話になってしまっているだろう。その資金は「意志伝達装置」とは縁のない庶民が納めた税金から出されていて,長らく「社会保障費が膨らんでたいへんだ!」などと言われている。意志伝達の意味をもっと広く捉えて,相談者の希望を満たす最も安価な選択肢を提示できる制度に変えないと,ずっと税金が無駄になり続けるように思う。

● 元凶となる方々

 最近(2024-3),国会の本会議場でタブレットの使用を認めてはどうかという質問をした議員が居たそうだが,見送られたとか。理由は……「品位に欠ける」だと。意味不明。だいたい,学校ではタブレット使用を推進しているようなことを聞いている。つまり,学校ではその「品位に欠ける」教育の導入を進めているということなのか? 法案や制度を作る議員や政治家,オヤクニンなどのアタマが昭和脳のままの人だらけで,最先端の技術を使いこなせる人材が育つとは思えないのだがね。

 これでは「意志伝達」という文言の意味が適切に解釈されて,それに活用できる IT 機器が福祉に広く役立てられる日は当面来そうにない。それが今回,「意志伝達装置」の話を業者さんから聞いて感じたこと。

 オヤクショの障害者福祉や IT 担当者の皆様は,どう思いますかね?



© M.Ishikawa; TREEWARE 2024.