筆者が契約していたデジタル通信接続サービスが打ち切られ,モデムなどのレンタルしていた機器を返却する必要が生じた。
「宅急便」で送ろうと思ったが,そのままだと送料が高いんで,何か割引がないか調べたら,伝票に記入する内容を予めスマホに入力しておくと安くなると知り,使ってみることにした。「手書き」が面倒に感じる筆者にとって,「そこだけは」たいへんラクに感じた。が! 他の点でいろいろ問題も感じたので,ここで考察してみたい。
なお,記載内容は 2021 年 10 月現在のもの。
● 経緯
筆者は自宅と実家に ADSL というデジタル通信接続の契約をしていたのだが,そのサービスが打ち切られてしまった。6月の自宅に続いて,実家も9月で終了し,モデムなどのレンタルしていた機器を返さなきゃならなくなった。自宅で使っていた機器は同梱するアダプタがコンパクトだったんで,小型のパック郵送規格で安価に済んだのだが,実家のはアダプタがデカくて,同じパックは利用できそうにない。近くに郵便局もないから「クロネコヤマトの宅急便(←つい社名から全部言いたくなる)」にしようと思ったが,やはりそのままだと送料が高くつく。前回利用した時は最低 ¥600 台で送れたのに,今は ¥900 を超える。前述した「小型のパック」相当の安く送れる規格もあるが,今回はやはりそのコンパクトタイプは規格外となり利用できない。
だから Amazon なんて嫌いだ。おそらく,あそこがヤマト運輸をコキ使ったんで,送料が上がっちゃったんだろう。儲けているのだから,それなりの送料を支払えよっての。一般向け送料まで値上げに巻き込んでおいて「自分たちのせいじゃない」顔できる神経……そりゃー「ベゾス(会長)は宇宙(旅行)から帰って来るな!」署名も集まるわな。
Amazon はさておき,ヤマト運輸さんのサイトで何か割引が受けられる方法がないか探していたら,どうやらスマホで予めデータ入力しておくと安くなるみたいだった。
でも,じつは筆者は「スマホ」が嫌い。とはいえ,じつは今は持っている。元々使う気もないのに「買った」理由は……ADSL のサービスが打ち切られちゃうから,ネット接続環境を確保するため「テザリング」でしのごうと,「仕方なく」購入した感じ。
でも,せっかく「スマホ」があるなら使わない手はない。ヤマト運輸サイトのフォームから,実家の Wi-Fi を使ってスマホで送り先などを入力。表示された QR コードをヤマト運輸の集配所で専用機器にかざすと,配達先と発信者が記載された伝票が印刷された……こんな仕組み。それで何とか ¥700 台まで送料を下げられた。社員がデータ入力する手間が省けるぶんだけ,安くしてくれるのだろう。「手書き」を面倒に感じる筆者にとっては,その点でもラクに感じたのだった。
● 問題点
しかし,問題点を感じなかったわけではないので,いつくか述べてみたいと思う。
◆ パソコンで使いたかった
当初,ヤマト運輸さんのサイトはパソコンで見ていたのだが,そこで見つけた「スマホで送る」のリンクは QR コードが表示されるだけで,URL は見当たらず,パソコンから同サービスを利用する手段は用意されていないようだった。
じつは筆者がスマホを持ってから3ヶ月半ほどだが,その QR コードでウェブ記事にアクセスする方法を知ったのはつい最近。それまでどうすれば読めるか分からなかった。だから,ヘタすりゃ今回もアクセスできなかった可能性もある。せめて URL を併記して欲しいと思った。
判明した方法としては,まずブラウザで「共有」のメニューを開き,QR コードの項目を選ぶと,それまで見ていた記事の URL の QR コードが表示される。そこで「スキャン」の選択肢を選べばカメラが作動してコードの撮影が可能になる……という具合。
なぜこの方法に気付くのが遅れたかというと,QR コードと「共有」という概念が結びつかなかったためだと思う。「共有」というと,自分と親しい人達に同じ記事を見てもらうため……といった感覚があるが,必ずしも複数の人に知らしめるのに使うとも限らない。たとえば,特定の記事を特定の誰かだけに伝えるためとか,あるいは自分の別のスマホに URL を移すために QR コードを利用することも考えられる。そうした使い方は,イメージ的に「共有」とは考えづらい。それが「共有」のメニュー内にあったわけで,そのため筆者はこの QR コード読み取り法に気づくのが遅れたようなところもある気がする。
他の点でもできの悪いブラウザで,QR コードの周囲に淡く色が着いていたり,少しでも暗いと読み取りが悪い。「ならば LED フラッシュを光らせれば!」……と思ったが,「懐中電灯モード」で LED を点灯しておいても,「QR コード読み取り状態」にした途端に LED は消えてしまう。結局読めない。メールアドレスの QR コードに至っては,たとえ読めてもメール作成の画面は出て来ないオンボロ設計だ。
こんなふうに,必ずしも「スマホで読めない」こともある。パソコンから「スマホ(QR コード)で送る」が使えるようになっていてもいいのではないかと思う。
筆者の持っているものも含め,Android スマホに標準装備されているブラウザは Google Chrome なわけだが,これには他にもいろいろ問題を感じる。たとえば,今使っているスマホでは,数週間前から「Chrome
を更新。新しいバージョンをご利用いただけます」といったメッセージが出ていた。が,そこを何度タップしても消えなかった。再起動してもダメ。つまり,「ご利用いただけます」と言っておきながらご利用いただかせてもらえない状態が長く続いた。
しかも,「プレーンテキスト」形式のデータを読んだ時,文字化けしてしまったら,そのままでは正しく表示し直すのはほぼ不可能……なんて困った仕様でもある。詳しくは,以下の記事を参照。
上記記事にも書いている不具合回避のため,筆者は普段,パソコン用ブラウザとして IE や Edge,Google Chrome などは使わない。それら開発企業の能力がその程度だと判断できるわけで,どこで足をすくわれるか分かったもんじゃない。当然 Google アカウントなんか「危うさ」しか感じない。
こうしたブラウザを「サポートの基準」としてしまっていいのかどうか,行政も企業もよく考えるべきだと思うのだが,多くの行政や企業のサイトが,それらのブラウザを「サポート対象」としてしまっているから,理解に苦しむ。
そんな意味でも,企業がウェブシステムを設計する際には,サポート対象のブラウザを「Google Chrome のバージョン××以降」なんて一部に限定すべきではないと思う。特に防災情報などで「ブラウザが古くて読めない!」なんてことがあるとどうなるか……犠牲者が増える要因になる可能性があることは容易に想像できるだろう。でも行政は,平気でサポートブラウザを限定する傾向がある。たとえ犠牲者が増えようとそんなこと行政は知ったこっちゃないのだ。実際,一昨年(2019),台風 19 号が襲って来た時,当時住んでいた調布市の運営するウェブラジオが,筆者の使っていたブラウザやその他アプリではことごとく未対応で情報を聴けず,ヘタすると多摩川に流されていたかも……なんて経験をしている。以下はその詳しい経緯。十万文字ほどあるので,「読み物」的にヒマな時にでもどーぞ。
それと,筆者としては別の面でも,ぜひパソコンから使いたかった。なぜなら,住所などの入力がキーボードとコピペで済み簡単だからだ。
筆者が普段使うパソコンは,Windows でも Mac でもなく,Linux(リナックス)という OS。この OS では「NICOLA」と呼ばれる親指シフト方式のキーボード配列を使えるようにすることができるので,普段もその配列で打っている。ローマ字入力と比較すると,打鍵数にして約 1.7
倍,速度で言うと2倍以上は効率が違うと思う。そんな筆者にとって,スマホでかな入力する時に,0~9の数字キーの配列を使う「フリック入力」など面倒この上ない。効率は格段に低下する。「スマホで十分」なんて言っている人は,いつまでも効率を上げられないだろう。
しかも,送付先をコピペしたい時,スマホだとアプリ画面を切り替える操作が要るが,パソコンならその操作は実質的に不要だ。パソコンの場合,送付先の住所が記載された窓と運送会社サイトの住所入力フォームを並べておけば,マウスを移動しコピペ操作するだけで自動でアプリは切り替わる。一方,スマホは1つのアプリ画面しか表示しないため,ペーストの時にアプリを切り替える操作が必要で,それも「1タップで
OK」とはいかない。しかもその複数回タップを,郵便番号,住所,宛名……と項目数だけ繰り返さなければならない。今回も,書き間違い防止の観点でプロバイダから指定された ADSL モデム返却先の住所をコピペしたのだが,パソコンより数段手間がかかった。だから「ラクだった」とは言ったものの,パソコンと比べれば3~4倍はかかった気がする。
パソコンで使えるようにする問題点は,「QR コードをどう提示するか」かもしれない。コードを表示したノートパソコンを集配所まで持って行くのか?……いや,そこはスマホでいいだろう。「何を言っているのだ?」と思われそうだが,その QR コードをスマホに読ませた時は,同じ QR コードを表示するようになっていれば,スマホに移すのは簡単になる。一方,そのコードを集配所で専用機器(ネコピット?)にかざすと「伝票を印刷する」仕組みであればいいのではないだろうか。
だいたい,プリンタがあれば「印刷」はできるのだから,パソコンに表示した QR コードだけ印刷して集配所に持っていって専用機器にかざすことくらいできるし,そうでなくても,その QR コードの写真を撮って画面に出せば済むのであれば,ガラケーでもできるはず。そう考えれば,利用できる機器を「スマホに限る」必要はなさそうに思う。
というわけで,確実にキーボードのあるパソコンから使えるとすごくラクだと思う。名前を「スマホで送る」ではなく「QR コードで送る」にすれば,「集配所で QR コードを見せる手段をどうするか?」くらいの判断は,利用者側で方法をいろいろ考えられそうにも思う。ただ,こういうのは「QR コード」が何かを知らずに使っている人もそれなりにいそうだから,そういう人には「訴えかけ」が弱まるかも知れないが。
◆ 分かりにくい UI 設計
じつは今回,1回失敗している。宛先と発信者(つまり筆者)の住所や電話番号などのデータをひと通り入力し終わって,最終確定しようとしたところで拒否された。原因は,パソコンに表示された QR コードでアクセスしたページを「ブックマーク」から呼び出したためらしいが,いつでも同じ URL で呼び出せるようになっていないと,利用しづらいと思うのだが……。だいたい,最終的にうまくいかないなら,手続きを進める途中,なるべく前の段階で感知して「やり直し」を促すシステムでなければ,いろいろやって「徒労に終わる」ことになる。実際,そうなっちゃったわけだし。
しかも今回は「1回だけ利用できればいい」と思って「ゲスト使用」したつもりでいたのに,QR コードの画像をダウンロード後しばらくしたら,入力したメールアドレスに「クロネコメンバーズの Web サービス登録完了のお知らせ」なんてメールが届いた。登録して使う気まではなかったのだがねぇ……「ゲスト使用」で開始したと思っていたから,なんか騙された気分。2回目の入力時に操作を間違ったかもしれん。
まぁヤマトさんならいい。日本郵便だったら,もう少しブチ切れているところだったと思う。
これらは,UI(ユーザインターフェイス)が分かりづらいことを意味している。
UI というのは,どんな時にどのような表示をして,どういった操作を促すか……という,利用者の操作性に関わる重要なところ。誤操作や「思ったのと違う」結果を引き起こすということは,正しい判断のしづらい UI であったということに他ならない。
じつは,筆者が「スマホが嫌い」という一因もそこ。スマホのアプリに,ことごとく UI 設計の「マズさ」を感じるのだ。
スマホを購入した当初,何ができるのかといろいろいじっていたが,結局,インストールされているかなりのアプリが役に立たないと判断して,無効化したり強制終了させたりした。アプリ一覧のアイコンが4割ほど減った。
たとえば「Google アシスタント」は無効化した。スマホに向かって喋れば,いろいろとしてくれるとかって説明のアプリだった。それじゃあってンで,うどんを茹でる時に「タイマー6分セットして」と喋りかけたら……画面には「ネットにつながっていません」という表示。いやいやいや,タイマーアプリ入っているだろーが! ネットにつなぐ必要などなかろう。いわば,タイマーを持っている担当者に「タイマーセットして」と頼んだら,「まずはセットしてもいいかボスに聞かないとダメで,今は電話がつながらないからできない」と言われたようなもの。使えねーヤツ。「ア○」か! 結局自分でタイマーをセットし,アシスタントは無効化した。
Facebook のアプリに至っては,何ができるのか調べようとタップしたものの,まず「利用規約」とやらに同意せよ的な文章が出る。何ができるのか知りたいだけなのだが,その前に「規約に同意しろ」だとか,順番がちぐはぐ。しかもその「規約」とやらも,やはり「ネットにつながっていません」で表示されない。同意もヘッタクレもない。何ができるのか分からんまま使う気になどなるわけなかろう。「ア○」か!
同様なアプリは Google 系にも多く,何ができるのかと思ってタップすると,「規約を読め,でもそのためにネットにつないでパケット使わせてもらうゼ」なんて勝手なことしようとするか,あるいは「ログインしていません」と表示が出て先に進めないアプリばかり。その「ログイン」できるようにするためにどうすればいいか……の説明は見当らず,明確には分からない。おそらく,「アカウント」を作る必要があって,やはりそこで「規約」に同意する必要があるのだろう。で,「ネットにつながっていません」で規約は表示しない可能性が高い。結果として,何をするアプリなのか分からないまま。何ができるのか分からないのに「アカウント」なんか作るかってンだ。「ア○」か! というわけで,アシスタント以外の Google 系アプリもかなり無効化した。
それらが数百キロとか数百メガバイトとか内部ストレージ領域を食っている。なぜそこに「利用規約」を収録して,オフラインで読めるようにしておかない? 「ア○」か!
最初の段階で設計がこんなのばかりだから辟易する。最近のアプリを作っているのは「ア○」だらけなのか? 「Amazon は嫌いだ」と述べたが,GAFA の開発者って総じて「ア○」ではないかと思ってしまう。
高齢者の携帯電話に電話して,さも「給付金がもらえる」ような話をして ATM の前まで誘導して操作させ,じつは「預金を騙し取る(他へ振り込ませる)」という詐欺があるが,これなんかも「表示と操作が何を意味するかが分かりにくい」という ATM の UI の弱点が狙われたものに他ならない。今どきの UI がいかに分かりにくいかを示している。UI の設計はもっとしっかり考えて作るべきだと思う。
◆ パスワードの扱いのアマさ
QR コード伝票の利用時にパスワードを指定したが,それは一時的に「QR コードの再表示」などで使うものだと思っていた。結果的にそれで登録されてしまったわけだが……登録されちゃったのなら,使わない手はない。試してみようとログイン画面でクロネコ ID とパスワードを入力した……が,ログインできない。
理由は直ぐ分かった。じつは,QR コード伝票作成時に指定したパスワードは 16 文字だったのだが,ログインのパスワードは 15 文字までしか受け付けなかったのだ。これではログインできない。
何でこんなことになっているのか。理由は少し経ってから分かった。届いた登録完了のメールをよく見たら,「こちらでパスワードを変更してください」というリンクがあった。そちらは直ぐ表示したので,そこからパスワードを登録し直したら,ログインできるようになった。つまり,QR 伝票の作成時とログイン用のパスワードは別だったのだ。が,どちらも同じ「パスワード」という文言を使っていた点で混乱したわけだ。ある意味これも UI の不出来といった感じもする。
じつは筆者は,20 文字前後のパスワードを設定することがザラにある。理由はもちろん,セキュリティ強化だ。
今回も,QR 伝票作成時は 22 文字のパスワードを設定しようとしたのだが,ヤマト運輸サイト側が 16 文字までしか受け付けてくれなかったから,仕方なく 16 文字で切ったのだった。
で,「再設定してください」ってンで開いたページでは,さらに短い
15 文字までしか登録できなかった。ログイン画面で 15 文字しか入力できなかった理由はそれだろうね。
筆者に言わせると,企業のセキュリティ意識がこれで大丈夫なのかといった感じがする。
「いや,そもそもお前は 20 文字のパスワードなど覚えていられるのか?」なんて疑念を抱かれるかもしれないが,こういうものは長いほうが覚え易いのだ。「また,何をバカなこと言っているのだ?」と思われそうだが,そこは考えようだ。使うサイトに関連が深い「短文」を登録してしまうのである。たとえば今回の場合は,こんな感じ。
IshikawaLovesBlackCat2021
もちろん,これは一例であり,実際のパスワードは全く異なる。
見て分かる通り,「石川は黒猫が好き」という言葉に,登録年を付加したもの。もし佐川急便で登録するなら,BlackCat の部分を Hikyaku
(飛脚)とかにすればいい。長いからそれなりにセキュリティも高く,サイトが違えば同じパスワードにならないうえ,しかも覚え易い。
問題は,その「違い」というのが,後半に出てくる場合があること。「15 文字まで」となると,このパスワードでは Bl までしか登録できない。佐川急便で Hikyaku に変えても,“Bl”の部分が“Hi”になるだけで,「違い」は2文字になってしまう。前半の IshikawaLoves が何らかの理由でバレてしまったら,「15 文字まで」と分かっているから,残り2文字を「総当たり」で試されたら,かなり早めに全体がバレてしまうことになる。芋づる式に複数のアカウントが乗っ取られる要因になり易いわけだ。
これが,パスワードは長い文字数の登録ができたほうがいい理由で,実際に長い文字数を登録すべきで,だからと言って忘れ易いわけではなく,むしろ覚え易いと言える理由だ。ヤマトさんの 15 文字は短い。
◆ 日本人なら長いパスワード!
じつは日本語には,長い英数文字を誰でも簡単に覚えられるようにする方法が存在する。たとえば,以下をパッと覚えられるだろうか。
frikykwztbkmmznot
パッと見バラバラだが,以下を見ればもう上を見ずに覚えられる。
古池や蛙跳び込む水の音
これで 17 文字。俳句に限らず,某保険会社が発表するサラリーマン川柳などで気に入ったものがあれば,それを使ってもいいだろう。つまり,日本人にとって,直ぐに覚えられる一見バラバラな 17 文字前後の英数字がたくさんあるということだ。
数字は,句の中の数字をそのまま使用したり,あるいは「ゴロ」で,たとえば「や→8」とか「わ→0」などと置き換えたり,前述の「登録年」などを付加したりすれば,さらにバレにくいパスワードになる。
hkn8rwumdmksgksnksrnooigw (箱根八里は馬でも……)
都々逸なら 26 文字,短歌ならば 31 文字前後まで覚えられる。百人一首で上の句と下の句に別々のものを使ったり,自分で考えた句で気に入っているものを使えば,もっとバレにくい。ただ,パスワードに使った句などは,あまり周囲に言わないようにしたほうがいいが。
15 文字がいかに少ないか……と感じるのではないだろうか。
パスワードに対する企業の意識というのは,どうもズレている気がしている。たとえば,筆者が利用している金融機関では,ネットバンキングにログインすると必ず「パスワードを変更してください」と表示される。ところが,総務省のパスワードに関する記事では,こまめに変更しないようにすることを推奨している。以下の記事を参照。
上記記事からパスワードに関する部分を抜粋したものが,こちら。
なお、利用するサービスによっては、パスワードを定期的に変更することを求められることもありますが、実際にパスワードを破られアカウントが乗っ取られたり、サービス側から流出した事実がなければ、パスワードを変更する必要はありません。むしろ定期的な変更をすることで、パスワードの作り方がパターン化し簡単なものになることや、使い回しをするようになることの方が問題となります。定期的に変更するよりも、機器やサービスの間で使い回しのない、固有のパスワードを設定することが求められます。
筆者は上記記事を見る前から,何となくだが「パスワードはむやみに変更しないほうがいい」と思っていた。というのも,フィッシングなどの詐欺サイトで,その「パスワードの再登録」を模したものを作られ,「古いパスワードと新しいパスワードを入力してください」などと表示が出てそれに従ってしまったら……もう言うまでもないだろう。つまりパスワードを頻繁に変更する人ほど,「パスワードを入力する機会」も多いわけで,そうした詐欺や「ロガー」という「キー入力を記録し外部に送るウイルス」などでパスワードがバレる可能性も増えるのである。
利用するサイトに関わる言葉を盛り込んだ「短文」レベルに長いパスワードにして,あまり変えないようにしたほうがいいわけだ。そのためにも,長いパスワードを受け付けられるようにすべきだと思う。
◆ 他社サービス依存の危うさ
ヤマト運輸さんもご多分に漏れず,スマホ用アプリを開発し,ダウンロードして利用するよう促しているようだが,おそらく筆者は利用しない。Google を信用していないからだ。
「Google は関係なかろう」と思われるかもしれないが,そのアプリのダウンロードは Google Play というサイトへのアクセスが必要で,そのサイトの利用にはログインが必要で,それには Google アカウントが必要で,それには若干の個人情報を Google に提示する必要がある。つまり,アプリのダウンロードと利用には,Google に若干の個人情報を提示する必要があり,その管理は委ねなければならない。裏を返せば「アプリを使いたいなら Google を信用せよ」と半ば「強制」しているようなものだ。おそらく多くの企業が,この意識が欠如している。
信用もしていない企業に個人情報を提示するわけにはいかない。アカウントが無ければ Google Play も利用できないから,アプリのダウンロードも当然できない。
こう言うと「みんなアカウントを持っているくらいだから心配ない」といった感じの論調になるだろう。しかし筆者は,みんながアカウントを持っていることと,「心配ない」ことの脈絡が分からない。だいたい「みんながやっていることだから……やっても大丈夫」という思考ほど危険なものはない。極端な話,かつてどこかのカルト宗教団体が,あちらこちらで殺人を繰り返していた時,「みんな教祖の命令に従って人を殺しているのだから,自分がそうしないわけにはいかない」との思いで凶行に走った人が何人いただろうかと思う。戦争になったら「みんな銃で敵を撃ち殺しているのだから,自分が殺さないわけにはいかない」といった考えで,平気で殺すようになるのと一緒のような気がする。
私企業ばかりか,オヤクショまでそんな意識だから困る。たとえば,昨年度分の確定申告をしに税務署に行ったら,LINE で来署予約できるようなことが書かれていた。LINE アカウントのない筆者のような者は蚊帳の外である。他の自治体では,LINE でワクチン接種を予約できるようにしていた……なんて話も聞いている。
LINE といえば,中国に個人情報が丸見えだったことが発覚した SNS
業者だ。LINE を利用して予約を受け付けると言うことは,そんな会社を「信用せよ」と,半ば強制しているようなものだ。こんなことを言うと,「嫌なら別の手段もある」という反論があるだろう。では,「ネットでできる」別の手段を用意しているだろうか。たいていは LINE のみだったりするのではないか。世の中には,電話や FAX が使えない人もいる。ただ,今はスマホさえ持っていれば,通信契約はなくとも,どこかの「公衆無線 LAN」を利用してネットにつなぐことはできる。しかしそこで「予約できるのは LINE のアカウント持っている人だけね」ということになればネット予約は不可能。足腰が弱く役所に赴けず,電話も使えない人だったら,ほぼ予約の手段は断たれる。「ネットで予約をしたければ LINE アカウント作れ」と暗黙に言っているのと同じで,それは LINE という私企業の利用者を増やす手助けをしているようなもの。差別的優遇に等しく,行政がすべき対応ではないように思う。
Google で障害が起きた時,「凍死しかけた」という書き込みを見たことがある。なぜかというと,ネットで Google につながる「スマートスピーカー」という機器に,エアコンの制御を全て任せていたために,Google がダウンした時,暖房が点かなくなったのだとか。思い出して欲しいのは,筆者がスマホに「タイマーかけて」と言ったら,「ネットにつながっていない」ことを理由に拒否されたこと。その「スマートスピーカー」とやらも,同じように Google につながっていないと何もできない仕様だったわけだ。その人はそのことをネットに書き込んで助けを求めたところ,エアコンのメーカーサイトでスマホ用リモコンアプリをダウンロードできると教えてくれた人がいて,ことなきを得たよう。
しかしこれ,就寝中などに障害が起き,実際に凍死してしまったら,どこが責任を負うのだろう。どこが責任を負うことになるにせよ,当面の間は企業同士の「責任のなすりつけあい」の泥沼裁判になったりで,遺族が振り回される様子が目に浮かぶ。Android スマホに筆者が「タイマーセットして」と言ったら「ネットにつながっていない」ことを理由に機能しなかった時,継続して使わないと決めて無効化した判断がいかに正解だったかと思う。そうしたものに依存することの危険性は,突然やってくるのである。しかも,時として命にも関わる話だ。
ワクチン接種予約に LINE を利用したり,Google Play からアプリをダウンロードさせたりすることは,間接的に LINE や Google のアカウントを持つよう求めているようなもの。では,それでアカウントを作った人に対して,「求めた側」で多少なりとも責任を負う気はあるのか。たとえば,そこから個人情報が漏れて何らかの被害が出たら,補償するのか。業者のシステムに不具合が出て,それが原因で手違いが起きて,間違った接種で健康被害が出たり,アプリを使って送った荷物が間違った相手に届いたら,責任はどこが負うのか。「送りつけ詐欺」が横行したため,届いた荷物に覚えが無ければ,今ではその扱いは受け取った側の自由のようだ。廃棄してしまおうと,中身を壊してしまおうと,受け取った人に責任はないことになる。それが唯一の「手作りプレゼント」だったりした時,どこがどのように責任を負うのだろうか。
こういった「他社のアカウント」を利用して予約やダウンロードするようなシステムは,述べたような責任問題を詰めたうえでの運用なのかはよく分からない。行政や企業はそこまで考えて LINE 予約や Google
Play でアプリを配信しているのだろうか。筆者にはそうは思えない。Google Chrome というブラウザは,一部のデータ形式で文字化けが起きたら読めないままになる仕様であり,それが重要なデータだったら役に立たない。LINE の中国漏えい問題では,責任の所在について,今でも明確な説明があった話は聞かれず,忘れ去られるのを待っているように見える。Yahoo! 社も,LINE 社との経営統合によってアヤシゲなことを平気でするようになっている。以下は,個人が Yahoo! に書き溜めていたブログが一部勝手に削除されたという話。
こうした企業を「信用してアカウント作れ」と言うなら,お断りだ。
● 今後
QR コードの伝票作成は,それこそ QR コードだが,別に QR コードでなくてもいいような気もする。「ただの番号」なら,スマホのない人も,メンバー登録をしていない人も使える。期限付にしておけば,同じ番号も使い回せるから,桁数もそんなに要らないようにも思う。
ここでは,他に「こんなことができないか」について述べてみたい。
◆ ID の利用
気付けば「クロネコメンバーズ」とやらに登録させられていて,画面には「クロネコ ID」とやらが表示されていた。で,その時に入力した住所宛に「登録完了」の通知が届けられたりした。その住所と「クロネコ ID」がひもづけられたらしい。
ということは,ヤマト運輸でなら,その「クロネコ ID」が分かればこちらの住所が分かるはずだ。すると,こちら宛てに何かを送ってもらうのに「宅急便」を使う時は,その「クロネコ ID」を伝えるだけで,伝票の「受取人」の欄の記入を省くことができそうな気がする。
ヤマトさんのサイトで調べてみたら,「匿名」で送付できるサービスがあるらしい。ただ,そのために別途料金が要るとか。いや,別に匿名でなくていい。ヤマトさんで受取人 ID を伝えれば,それが宛先に記載された伝票が出てくる仕組みがあると,送る側はちょっとラクできる。
今回も,ちょうど筆者宛に「送りたいものがある」という方がいたのだが,匿名にする必要はないし,ましてやそのために追加料金を支払わせるなんて申し訳ないワケで……「クロネコ ID」の出番はなかった。
◆ テキスト形式データ
確定申告に行って,「LINE で来署予約なんてできねーよ」という話はしたが,じつはその年は一部の申告書を税務署サイトからブラウザで作成している。その「作成サイト」は,まぁまぁよくできていて,必要事項を入力すると PDF が作成され,印刷すれば正式な「申告書」として提出できるのはもちろん,入力データをパソコンに保存しておくこともでき,作り直しにも利用できる。もう少し詳しい話が以下にある。
上記記事内でも「要望」として述べているが,その「保存データ」がバイナリ型式で,関係者以外構造は分からない。これをテキスト形式にして,誰でも分かるようにしてもいいような気もする。そうすれば,人によっては自分でデータを作れる。たとえば自分で手作りした製品や,「ガレージセール」のような感じで不用品を売りたい人が,そのデータを作成して運送会社のサーバに送る仕組みを自分のサイトの入力フォームに置いておけば,受信した運送会社側で,送付伝票か,またはその元になる QR コード用のデータを作れるはず。あとはそれを元に PDF などで伝票データを送るか,該当コードから集配所で伝票を印刷して貼ってもらうかすればいいわけで,手間がかなり削減できるように思う。
ヤマトさんは,パソコン向けの伝票作成アプリも配布しているようだが,筆者の使っているパソコンは OS が Linux なので対応できないだろう。でもたとえば,前述した「テキスト形式」で受け付ける「ウェブサービス」ページがあれば,OS はあまり関係なくなる。筆者のような
Linux 使用者だけでなく,他の人もいろいろ使えそうに思う。何といっても,そのテキストデータを運送会社に送る仕組みを誰でも自分の運営するサイトに埋め込むことが可能になるのだから。
そこまでできるなら,もう運送会社共通仕様的なデータ形式を策定してもいいのではないかと思う。
筆者は「ワード」というワープロアプリも使っていない。いや,だいたい Linux 用のワードなどないし……。では何を使っているかというと,OpenOffice というフリーソフトを使っている。このアプリで扱うデータは Open Document 形式といって,世界標準として扱われているらしい。そのため,他のワープロアプリで読み書きできる場合も多い。つまり,そのアプリで作ったデータが,他でも使えたりするわけだ。
とはいえ,メールなどで他者に送付などするデータは PDF が多い。この形式も,やはり世界標準的に扱われている。最近コンビニに置いてあるコピー機には,この PDF 形式を印刷する機能があるくらい。筆者もここしばらく,もっぱら USB メモリに PDF を収録して,コンビニで印刷してばかりいる。おかげで,最近はプリンタというものの必要性を感じなくなってしまった。
こんな感じで,扱うデータ形式を共通化すれば,汎用性も高まって,業界的なコストも安く済みそうな気がする。運送業界はどうだろうか。
● でもやはりスマホは嫌い
「何だかんだ言って『スマホ』も使いこなしているじゃねーか」とか言われそうだが,やはりスマホは嫌いである。述べたように,できればスマホよりパソコンで利用したい。
嫌いなスマホを「買った」理由は述べたが,では「嫌い」な理由は何か……まぁ機会があればまた長々と述べたいと思うが,端的に言えば,「スマホは思考能力を弱らせる」と考えているからだ。
アインシュタインはこんなことを言ったらしい。
テクノロジーが人間を上回る日を私は恐れている。世界は愚かな世代でいっぱいになるだろう。
Android スマホで標準的に使える Google Chrome というブラウザがいかに「造り」がよくないか述べたが,多くのサイトがそのブラウザを「サポート対象」として疑いを持たない。スマホだけでなく,スマートスピーカーなんて製品でも,話しかければ何でもしてくれそうに喧伝されているが,Google がダウンしたり,そうでなくても,ネットにつながらなかったらできないことだらけになる点も述べた通り。多くの人がスマホで利用する SNS である LINE では,個人情報が中国から丸見えだったし,その LINE と経営統合した Yahoo! は著者に何も伝えないままブログを削除し問題の隠蔽を図った。これが,それら企業の管理責任能力。いくらスマホから簡単に利用できるとはいえ,こんな企業が設計したサービスをワクチン接種予約やアプリのダウンロードで使うことに「リスクがない」ワケないと思う。それを気にせずアカウントを作って使う人たちや,そのアカウントを利用する企業や行政も数知れない……こんな状態が続けば将来どんな結果を招くか,よく考えたほうがいい。
まぁ,結局「考えられない人たちが使う」わけだ。アインシュタインの懸念が現実になりつつあるように思う。