介護現場の諸問題が「発生する」原因と「解消しない」原因


公開 (UL): 2019-05-31
更新 (UD): 2019-05-31
閲覧 (DL): 2024-12-22

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時事川柳 News Senryu

パーティー券  
民意も一緒に
  蹴り返し
Kick back both party tickets and people's opinions.

 自民党の一部(?)派閥がパーティー券のノルマを上回る分の売上げを議員にキックバックしておきながら政治資金収支報告書に不記載だった問題が広がりを見せている。なるほど,こうしたことが党内で常套化していたのだとすれば,岸田総理はじめ同党政治家にことごとく「民意を蹴り返すクセ」が付いているのは当然という感じもする。これっぽっちも「悪いこと」と思わなかったのだろうな。そんな人たちに誰が票を入れるのだろうか。少なくとも,岸田の広島と「頭悪いねぇ」と暴言を吐いた議員を選出した長崎に「ふるさと納税」はしないことにしよう。
参考: 自民県 絶対しないぞ ふるさと税

今回はもう一句!

危機感の  
ワリに二階は
  誰も居ず
Having sense of crisis, but nobody takes shelter of 2F.

 大雨などで危機感を持ったら二階のような高い所へ避難すべき的な話を聞いたよーな気がするのだが? パーティー券のノルマ上回り分キックバックの政治資金収支報告書不記載問題で,安倍派は何人も辞任したのに,同じく捜索を受けている二階派に辞任する話があるかというと,今のところ誰もいない。総理は「危機感を持って」とか言っているらしいが,どこが「危機感」なのやら。

(⌚2023-12-19)

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● テレビ番組の安易な「あきらめ」のセリフ

 筆者はほとんどテレビを見ない。多少なりとも「じっくり」見ることがあるのは帰省した時くらいで,あとはせいぜい出かけた先でたまたま点いているテレビをチラ見する程度のもの。
 筆者は「パソコン指導」も仕事のひとつなのだが,そのお相手の中に障害を持つ方がいる。ある日その方の指導のために出向いた介護施設で点いていたテレビ番組に,事故か病気で身体が部分的に(首から下?)麻痺してしまい,車椅子で生活している方が出演していた。タレントっぽかったが,なにせ「チラ見」した程度なので,もしかすると違うかもしれないけど,以下,便宜上「タレント」ということにしておく。
 内容はと言えば,何とか「一人暮らし」に挑戦しているものの,当然ながら「不自由はある」という話。ある程度の家電の操作は「スマートスピーカー」と呼ばれる製品を使い,いちおうは音声でできるらしい。たとえば,部屋の照明の点灯は「明かりを点けて」と喋れば,スマートスピーカーが点けてくれるらしいが,外部とのやりとりで利用しているパソコンは,手でキーボードを打てないため,棒を口にくわえるかアゴと肩で挟むか何かで操作しているようだった。その棒が落ちた時,「もうダメなんです」みたいなことを言っていた。「自分で拾えない」ということらしい。

 それを見て,「落ちないように天井からゴムひもみたいなもので棒を吊っておきゃいいのに」と思ったのは筆者だけだろうか? 要は,棒を放してもそこに棒がとどまっているようにすればいいだけの話。それなら,「よーと(洋灯吊り金具)」と呼ばれるクエスチョンマークみたいな形状のねじ込みフックとゴムひもで,かかる費用はせいぜい数百円,スマートスピーカーの十分の1から百分の1くらいだ。もし天井に穴を開けられないなら,別にテープで止めたっていいし,それもダメなら,予備の棒を何本か横に置いておくとか,いくつか解決策は考えられる。いずれにせよ「棒を落としてしまうとダメなんですぅ~」と,わざわざテレビで訴えるほどのことでもなくね?……それが率直な感想。

 こうなると,そうした番組を放送する意味がよく分からない。「障害があるとたいへんだよー」と言いたかっただけ? 確かにたいへんなことは多いだろうが,「簡単な解決策」が容易に考えつきそうなことを見せられても,「いや,それくらいどうにかできるだろ」とツッコみたくなるだけで,「たいへんなんですー」という主張には感じない。
 もしたまたまその番組のスタッフはじめ周辺の方々が,「ゴムひもで吊っておく」といった簡単な解決策を思いつけない人ばかりで,番組に「(棒を拾えないから)誰か何とかして欲しい」的な意図があるなら,関係者は早めにこの記事を見つけてくれることを願う。こちらから伝えたくても,最初に述べたように,筆者が出向いた先でチラ見しただけなので,どこの放送局が作った何という番組なのか,まったく分からんわけだし。

● アヤシイ感じがする「番組の目的」

 でも,実際に「何とかして(あげて)欲しい」という意図が番組にあるなら,もう少し明確な表現があってもよさそうな気もする。タレントも「ダメなんです」的なことは言っていたが,「何とかしたい」といった訴えは明確には感じなかった。なぜなのか。そこに違和感がある。
 テレビ番組ってどれも似たような感じで,筆者にとっては,何を伝えたいのか意図がよく分からないものばかり。その辺りも,テレビを見なくなった一因。

 ひょっとすると,番組の主な目的は違うのかもしれない。別に「誰か棒が落ちないようにしてぇ~」と訴える気はなく,たとえば,ホントにそれなりにファンのいるタレントならば,「たいへんなんですぅー」を見せるだけでも,ある程度は視聴率稼ぎになるかもしれない。
 あるいはそこで使っている製品のひけらかしとか。使っている製品をさりげなく番組に出して,そういった製品の存在を知らしめるための,ある意味「宣伝」が目的ならば,「棒をゴムひもで吊れば済むんじゃない?」などとテレビ局やそのタレントに伝えても無駄だろうね。むしろそうした内容は放送したくないはず。だって,「ダメなんですぅ~」を解決することが目的ではないうえに,もしその「簡単な解決法」を放送して広く知られた結果「特別な機械なんか買わなくても済むじゃん!」などと考える人が増えてしまっては,宣伝効果もヘッタクレもない。
 つまり,障害者の自立(ひとり暮らし)のために,「誰でもできそうな方法」……たとえば「ひもで吊るすだけ」というようなお金をかけずに済む方法があったとしても,「宣伝費」で番組を作っているテレビ局が放送してくれる可能性は低いってことよね。何らかの機器の「宣伝」であるからには,「売るため」にお金をもらっているのだから,「買わずに済む」ような内容ではマズいだろうし。だとすれば「誰か何とかして~!」といったメッセージ性も薄くなるのは当然。

 障害を抱えつつ「一人暮らし」に挑戦するタレントの意気込みを伝えたかっただけなら,多少は分かる。ただ,ついでに言うなら,そうした「自立」が促進されれば,「つきっきり」で世話をする必要性が軽減されるケースも増えて,介護現場の人手不足問題も軽くなる可能性もあるのだから,せっかくなら,そこまで……つまり自立の「促進」を目指す番組内容にしていれば,介護関係者はじめ,要介護者を抱える人たちが見る価値もあったかもしれない。が,残念ながら「ダメなんですぅ~」と言って終わりでは,何の問題解決にもつながらない。やはり,見ているだけ時間が無駄な気がしてしまう。
 もし,そうした「自立促進」を目的として掲げるなら,あれこれ何か製品を買ったり,人の手間をかけたりせずに「自立」に結びつく方法を広く知らしめたほうが,目的達成に近付くのではないかと思うが,前述したような構造がある限り,およそそれに寄与する番組製作は,テレビ局に期待できそうにない。介護現場の問題解消につながらないだけならまだしも,場合によっては,むしろ悪化させてしまいそうな気もする。

● 「考える,調べる」機会を奪うテレビ番組

 単純に,製品の紹介的な宣伝ならいいけど,そうした製品の福祉分野への需要拡大を当て込んでの番組だとすると,問題も感じるところ。

 ところで,昔は布団の中でちょっと本でも読んでから寝たい時など,わざわざ起き上がらなくても照明を消せるようにするために,どうしていたか。みんな吊り下げ式照明のスイッチのひもを,継ぎ足して伸ばしていたのではないだろうか。筆者に言わせれば,これもある意味「リモコン」。「ひもコン」と言ったほうがしっくり来るだろうか。これは,「スマートスピーカー」なんてものがない時代でも,手元で照明をオンオフできるよう,みんなが工夫していたということ。
 「自分に近い場所まで上から吊るす」という意味では,最初に述べた「棒をゴムで吊る」という方法も大差ない。ある意味「応用」。

 ただ,筆者の周辺では,こうした「直ぐ役立ちそうな簡単な解決法」は,すんなり受け容れてもらえない感がある。とにかく「ダメな理由」ばかり挙げる人はどこにでもいそうだし。前述の方法で言うと「最近のシーリング(天井取り付け式)ライトはひもを引っ張るスイッチじゃないからダメだ」と言う人が必ずいそうよね。でも,リモコンが付属していれば,ひもを引っ張って,そのリモコンのスイッチを押す工夫くらいはできそうだし(後述『「ゆるい技術」を拒む現場』を参照),そうでなくたって,別に従来のひもスイッチ式照明に付け替えたって何十万円もしないだろうし。たいていは「スマートスピーカー」より安上がりだろう。
 もしかして,「そんなに簡単に解決されてたまるか!」的な感情でもあるのだろうか。スマートスピーカーのような,それなりの「お金」をかけた解決手段でないと「解決した気にならない」とかなのか。
 そうした人がリーダーとして君臨していると,前述のような「ひもをぶら下げる」だけで済むような提案も「そんな簡単な方法じゃダメ!」で一蹴されてしまうだろうね。解決につながるなら,簡単であることに越したことはないのに。方法に問題があると思うなら,どういった点が問題なのか具体的にピックアップして,そうした点の改良を繰り返せば問題解消に向かう可能性もあるのに。残念ながらその手の人は,どこに問題があるかを挙げることができないばかりか,解決策の提案さえないことが多い。考えようによっては,問題の解決をただ妨害しているようなもの。「簡単ではダメ」タイプの人がリーダーとなってしまった現場では,いかなる問題の改善もなかなか難しいかもしれない。
 あるいは,スマートスピーカーと比べ「スマートじゃない!」ということだろうか。「スマート」スピーカーと言ったって,それだけ買えば使えるってもんじゃない。部屋の照明や家電機器など,周囲もそれに対応した製品を揃えないと制御することはできない。スマートスピーカー本体だけなら数万前後だが,操作したい機器代金と,その設置や設定にかかる人件費まで考えると,それなりの費用と手間になると思う。
 だいたい介護現場は,慢性的な資金不足,人手不足ではなかったか。それを考えれば,製品の購入費用や設定の手間などがかかる方法なんか「ちっともスマートじゃない」と筆者は思うのだが。

 そんな「スマートスピーカー」を,介護現場へ「売り込む」目的の番組をテレビ局が仕掛けてきたとしたらどうなるか。まず,テレビの番組に「製品の宣伝」的意味があるとすれば,「ひもを使えば済む」ような「誰にでもできる簡単な解決法」は,むしろ広く知られては困るはず。述べたように,わざわざ何か特別な製品など買わなくても簡単に解決できると分かれば,製品を買おうとする人はそんなに増えないだろうから宣伝にならない。買わせるのが目的の番組なのだから,見た人にそうした「簡単な方法」を考えたり調べたりすることを忘れさせ,見た製品を「欲しい!」と思う人を増やしたいはずで,当然,そうした方向の番組作りになる。だから,相応の費用なり人件費なりがかかりそうな製品の宣伝のためには,負担が少なくて済みそうな「簡単な方法」は,たとえあってもボツにしてしまい,紹介することなんてまずしないだろう。
 そんな番組を多くの人が見た結果,「ひもをぶら下げれば済むんじゃない?」程度の問題の解決法を考えも調べもしないまま,「障害者介護の補助にスマートスピーカーを!」的考え方が先行するようになって,猫も杓子も「とにかくスマートスピーカーを」という傾向につっ走られることを,筆者は懸念している。何らかの製品の購入を必要とする方法「しか」見ずに,「スマートスピーカーを手に入れられないと,照明のオンオフすらできない」と考える人が増えて,中にはスイッチのひもを伸ばせば使えそうな人までもが,「それが手に入らないと,身の周りのことがひとりでは何もできない!」と思い込み,「自立」をあきらめてしまうのではないかと。

 そうなると今度は,「補助で入手できるようにすべき」といった議論が出てきても不思議ではない。すると,「ひもでぶら下げてみては?」といった簡単な工夫を試みることなく,「(使えるかどうか分からないけど)補助で手に入るのだからとにかく試してみよう」的に,スマートスピーカーを「安易に」求める傾向も出てくる可能性もある。
 確かに,スマートスピーカーが使えれば,照明など身の周りの家電の操作のために,「つきっきり」で世話をする必要性は軽減されるかもしれない。しかし,そうした状態に至らしめるまでに必要な費用やら手間ヒマやらも考えるべきでしょ。スマートスピーカーに対応した家電などを揃える費用はどこから出る? それらを設定してくれる人や,確実な動作を確認してくれる人はどこから連れてくる? それらの人に報酬は出せる? 繰り返しで恐縮だが,介護分野は慢性的な資金難,人手不足ではなかったか。「ひもを付けておけば済むんじゃない?」的な数百円で済みそうな工夫をスッ飛ばして,介護の現場に,購入費用や設定する人員が必要な機器の需要を増やすことが適切なのかは,大いに疑問。
 省資金,省力化のためにも,要介護者の「自立」をもっと推し進める必要があるのは,介護現場の共通認識だと思う。ただ,だからといって「スマートスピーカー」のような機器を「補助で」手に入れられるようにして,照明など周辺の機器まで買い揃えて設定できる人を探すのと,「ひもをつないで,ぶら下げて試してみる」こととを比較し,どちらが実質的に「省資金,省力化」になり,「現場で直ぐ実践できるか」だと思う。「スマートスピーカー」のような機器が手に入れられるようになるのを待ち続けることは,逆に言えば,手に入れられるようになるまで問題は改善しないことを意味するのではないだろうか。
 あ,言い忘れていたが(言うまでもないかもしれないが),スマートスピーカーは,音声認識で操作するのが原則なので,基本,喋れる人でないと使えない。使用者はスマートスピーカーが認識できる程度にしっかり喋れる必要がある。もし「障害者は補助で手に入れられるようにしよう」となった時,補助申請を受け付ける側(たいていお役所だろう)が,その点をキチンと確認する制度にするかどうかは眉唾もの。スマートスピーカーを操作できるほどはっきり喋れる人かどうか確認されなければ,補助で手に入れても結果的に使うことができず,補助が無駄になる可能性も高くなる。このような点も,「とにかく障害者/介護に補助を!」という傾向に対する懸念。

 もし番組にそうした製品を広めようとする宣伝の目的が実際にあったとしたら,結果的に,かえって介護現場の資金不足や人手不足などの諸問題を悪化させはしないだろうか。「問題を感じる」というのはそこ。本来「テレビ局」をはじめとするマスコミは,製作/放送する内容が,社会の諸問題を改善しうる方向を向いていてしかるべきではないのかと思うが,述べてきたような事情を考慮すると,実態は逆のことをしている可能性も高いんじゃないかって話。
 「そんな陰湿な番組作りなどするのか?」と疑問に思った方は,ぜひ「ヨーグルト,ステマ」でネット検索してみて欲しい。検索結果の件数が,問題の深刻さを示している。いくつか記事を読めば,いかにテレビ局が「こっそり宣伝する」手法を安易に使っているかが分かると思う。明示的なスポンサーの製品ではないものでも,一部のスタッフが,その製品の愛用者だとか,そのメーカー関係者の知り合いだったりした時,何気なくカメラに映り込ませ,番組製作の現場で暗黙的に宣伝することも容易にできてしまう。法律的なことが記載されている記事によれば,もし利害関係があって製品を映したのなら,「スポンサー」として明示しないと法律違反になるらしいから,述べてきたような手段が横行しているとすれば,テレビ番組は「無法状態」もいいところで,視聴者はいわば「違法番組」を見せられている可能性も高い。番組を作る側にとっては,映った製品を見て「あれって便利そうだな」と思われれば成功,つまり「まんまと騙せた」ようなもの。何より厄介なのは,それが見ている側から分からないという点。
 では,そうした違法なテレビ番組に乗せられないようにするにはどうすればいいのか。見て判断できない以上,とにかくテレビ番組を見ないようにするしかない。だから,筆者はほとんどテレビを見ない。

● 「ゆるい技術」を拒む現場

 筆者もいちおうは「エンジニア」なので,パソコンの指導以外にも,様々な課題や問題に対して技術的な解決策を考えて提案するのも仕事。ただ,一般的なエンジニアよりも「解決法」と考える範疇が広い……というか「ゆるい」かもしれない。たとえば,最初に述べたタレントが抱えるような問題に「エンジニアらしい」提案をするとしたら,それこそ「スマートスピーカー」のような最新技術を駆使した解決法を期待されるかもしれない。が,筆者がまず提案するのは「棒をゴムひもで吊っておいたら?」的な方法だったりすることがけっこうある。
 だって,介護現場は,資金も人員も不足しているって聞いているし。それなりの金額の製品を買う必要があったり,誰かそこにいて「××してあげないとダメ」みたいな,お金や人が必要な方法を紹介したって,問題は解消しないだろうし,そのどちらも必要なさそうな提案のほうが役立つだろうと思うわけで。
 プライドの高いタレントはイヤがるかもね。「ぶら下がっているものに食いつくとか,パン食い競争じゃあるまいし!」とか言って。ただ,別に「タレント向け」の提案をするのが仕事じゃないから。

 世の中,「押しボタン」によって操作するものは多い。それは考えようによっては,「押しボタンを押すことさえできれば,いろいろなものの操作ができるようになる可能性がある」ということ。ただ,障害がある方にとって,ボタンの大きさや形状,設置位置,硬さが原因で,そのままでは操作できない押しボタンも多い。そこで考えたのが「押しボタン押し器」的な器具「Wary-Basher(ワリバッシャー)」というもの。

▼ Wary-Basher
http://treeware.jp-help.net/?kwbs1

 上記ウェブページに掲載した画像を見れば,非常に簡単な構造であることが分かると思う。材料費も,自分で揃えれば数百円,キットの価格も千円ちょっとほど。
 何に使うかといえば,元々は「押しボタン押し器」のつもりだった。考案した発端というのが,「体の中で動かせる部分は指が少しだけ」という方からの相談で,「障害者向け電動ベッドの『寝返り』ボタンを,夜中に目が醒めた時,自分で押したい」というもの。それまでは,まずナースコールなどで寝ている誰かを起こして,押してもらっていたらしい。「ボタン1つ押すためだけに誰かを起こすのが心苦しいから」何とかしたかったよう。これもおそらく,その「障害者向け電動ベッド」の押しボタンが,その方が直接押すのはむずかしい形状だったのではないかと思う。
 作って気づいたのは,この器具は「ボタンを押す」以外にも,様々な応用ができるという点。家電のリモコンボタンの操作はもちろん,楽器を鳴らす,おもちゃで遊ぶ……それらを直接操作できない障害のある人でも,この器具を使って操作できるようになる可能性のある応用例が,上記ウェブページ内,あるいは同ぺージ内に掲載してある,この器具のキット販売をしていただいている「エスコアール社」さんのリンク先のビデオで紹介されている。最近は独自に応用例を公開している人もいるようなので,「Wary-Basher(ワリバッシャー)」でウェブ検索してみると,その他の応用例が出てくるかもしれない。
 一般的なスイッチが使えないほど障害が重い人も,あきらめてはいけない。福祉機器メーカーから販売されている障害者用の特殊なスイッチを接続して対応できる場合もあるからだ。たとえば,眉毛や目の動きなどの,身体の一部の動作を感知したり,わずかに触れたことで反応するスイッチなど,この「ワリバッシャー」に接続して使えれば,そうした動作で家電や楽器を操作したり,おもちゃで遊べるようになる可能性もある。今まで障害者向けに製造された機器「しか」使えなかった人も,他の様々な機器が操作できるようになって,そうした重い障害を持つ人でも,少しは「自立」に近づくこともあるのではないかと思う。

 応用として,前述したような,スイッチの引きひもを継ぎ足しできない「リモコン式照明」の操作を考えてみる。と言ったって,リモコンの押しボタンを押すようにこの「ワリバッシャー」を設置し,「引っ張るスイッチ」をつなげば,ひもを引っ張って照明をオンオフできるようになる。それだけだ。もちろん,「引っ張るスイッチ」でなくてもいい。これも前述したような,目や眉の動きや軽いタッチで機能するスイッチをつなげば,それらの動きで照明を操作できる可能性がある。うまくいけば,スマートスピーカーやそれ対応の照明器具なんか購入不要だ。
 ただ,照明のリモコンが押しボタンひとつで「オン/オフ」するタイプなら簡単だが,オンとオフの2つ押しボタンがあるタイプだと,この装置も2つ設置し使い分けが必要になるので,少々手間かもしれない。それでも,スマートスピーカーよりずっと安上がりだとは思うけど。

 ただ残念ながら,こうした例や,最初に述べた「棒をゴムひもで吊っておけば?」的な簡単な工夫は,介護現場にどれほど受け容れられるのかは疑問。たぶん「解決法」として見てくれない人がほとんどのような気もする。なぜなら,筆者の元には,こういった器具の応用で解決しそうな相談はめったに寄せられないから。

 筆者がパソコン指導をしている方に,作業所で働いている方がいる。「作業所」といえば,様々な障害のある方に,その人ができそうな作業を割り当てた「労働」を与えて社会参加を促そうという施設。目的からいえば,紹介した「Wary-Basher(ワリバッシャー)」のような,様々な動作や操作に応用の利く機器があれば,それこそ様々な障害の症状の人に,様々な作業をさせることが実現できそうな気がする。
 今のところ筆者の元には,どこからもその手の相談は来ていないが。
 最近その作業所では,人が減ってしまい運営が苦しい……なんて話を聞いた。作業所がいくら障害者の施設とはいえ,どんな症状の障害にも対応するオールマイティな設備があるわけでもないだろうから,「どんな障害も受け容れます」とはいかず,つらいところかもしれない。人員の補充を円滑にできるようにするとしたら,スタッフの柔軟な対応と,なるべく多様な障害の症状に使える器具も必要になるだろうと思う。
 そういう時こそ,紹介した「ワリバッシャー」のような器具を役立ててもらえればいいのにと思っている。今のところ筆者の元には,その手の相談は来ていないが。

 「障害者の社会参加」云々でよく思い出すのが,相模原市の障害者施設「やまゆり園」で起きた大量刺殺事件。犯人は,障害者を「心失者」と呼び,「役に立たない人たち」というような扱いをしていたとか。
 いささか手前味噌だが,もし筆者が考えるような「簡単に作れるし,使える」アイデアが既に広く浸透していて,様々な作業を様々な障害に対応させるために活かされ,犯人が犯行に及ぶ前に,そうした作業所で働く障害者の姿を目にしていたら……ひょっとすると,凶行を考え直すきっかけになっていたのではないかなぁと思うことがある。
 筆者の考えたような器具が,筆者の知らないところで活かされ,今後そうした短絡的な考えによる犯行が抑止されることを祈るしかない。

 筆者が主に障害者向けにパソコンの指導をしている背景にも,同様な思いがある。パソコンなんて,キーボードが打てたり,最近では画面に触れるだけでも,ある程度の作業ができる。簡単な「スクリプト」が書ければ,特定の作業用の操作画面を作ることもできる。障害者が「できること」を増やすには,最高の道具ではないかと思う。
 そういえば,前述の「ワリバッシャー」発案の発端となった「指の先しか動かせない」という方は,そのわずかに動く指で,自分と同じ障害を抱える人たちの団体の事務か何かを手伝っているような話を聞いたことがある。表計算ソフトで少々複雑な処理をする必要があり,何かいい方法はないかと,メールでアドバイスを求められたことがあった。
 「指が少ししか動かせない」障害を持つ人が「役割」を持たせられるということは素晴らしいことだと思った。でも,障害の重さから判断するに,まず「出勤」はできそうにない。とすれば,メールなどでやるべき作業の説明を受けたり,作業結果のデータをその団体に送ったり……といったやり取りをしていたのではないかと思う。これは,障害の有無に関係なく,何らかの仕事を得られる仕組みを考える「バリアフリー」と,「障害者の社会参加」の観点で,非常に意味のあることだと思う。立派な「テレワーク」であり,「アウトソーシング」であるような気がする……「相応の報酬があれば」だけどね。手伝わせた団体側が,そこまで考えてそうした業務を「依託」していたかまで,筆者は知らない。
 でも,これこそパソコンの活かし方だと思うのだが,こういった話はめったに聞かないし,その方からの相談もこの一回だけだった。

 たしかその時は「行列の積を求める関数」の式を表計算ソフトに埋め込んで,自動的に計算できるような方法を伝えたと思う。「行列の積」と言っても,数学的手法なので,分からない人がほとんどだろうけど。でもその方法を使わないと,いちいち手計算しなければならなくなり,それがかなりの手間になりそうな相談内容だった。
 これは,そうした理数系の知識が重要になることが,どこででも起こりうることも意味しているように思う。「事務」なんて別に障害者団体に限った話じゃないし。その時はたまたま筆者に相談してくれたからそうした方法を伝えられたが,今日もどこかに,そうした「自動的に求められる数学的手法」を知らず,時間をかけて毎日手計算している人がいるかもしれない。そりゃー手間も負担も減らない。
 この,手間をかけなくても済む方法があることを「知らない」という点が,何より大きな問題ではないかと思う。今の介護の現場は,資金と人員の不足が深刻と言われている。もし,業務の手間を軽くする方法があれば,成果は同じでも勤務時間を短くできたり,その分シフトの人員を増やしたり,相対的に時給を上げることも可能になるかもしれない。しかし,そうした方法があったとしても,「誰も知らないまま」では,従来の「手間のかかる方法」を永遠に踏襲するしかない。そりゃーいろいろと手間も負担も減らない。
 もう一度言うと,前述の例では,たまたま筆者のところに相談が持ち込まれたから,そうした方法を伝えることができた。逆に言えば,相談されなかったら,「自動的に求められる数学的手法」を伝えられないまま,その人は今でも時間をかけ手計算している可能性もある。どんなに理数系,工学系手法で改善する問題があっても,そうした知識のある人への相談が一切ない状況,つまり,現場がその方向の問題改善を模索しないままでは,少なくともその方向への問題改善への道は開かれない。そりゃー手間も負担も減るわけない。「いつまでも問題が解消しない」大きな要因ではないかという気がする。
 ついでに言うと,こうしたパソコンを使った手法の導入により効率化が図られた時,成果は同じでも時短になるのだから,増員や昇給ができるのではないかと書いたが,イマドキの企業だとたいていそうはならない。むしろ作業時間の減った分,給与を減らすか業務を増やす,なんてことを平気でする経営者ばかり。つまり,作業効率を高めるアイデアを出したり実践したりすると,給与が減るか,給与はそのまま仕事が増やされる。早く帰れるようになるわけでもなければ,人員補充や昇給もない。長年,日本の作業効率は,先進国中最下位であり続けているとか。そりゃそーでしょ。効率を高めると不利になるのだから。
 それでも,どこの現場もパソコンが導入され,少しは効率も上がっているはず。とすれば,組織としての収益も多少は増えたはず。その分はどこへ行ったか。経営者が懐に入れるか内部保留に回されるのがオチ。それで政府お役所は「格差拡大や内部保留の増大にアタマ抱えている」らしい。非正規雇用枠の拡大など,経営者のほうしか見ない政策ばかりして来て,格差拡大や内部保留増大に「アタマ抱える」? いかに自分たちのしていることを分かっていないかということ。
 ちなみに,イマドキ現場にはどこにでもパソコンがあるが,経営者のトップたる経団連会長の執務室に初めてパソコンが設置され,「今後はメールで……」という話が出たのが,昨年(2018)五月のことらしい。

 それはさておき,別に介護の現場に限らず,世間一般に「人手不足が深刻」とか言われているようだが,パソコンを導入したところで,どう活かせばいいのか,「現場の人が分からない」というのも大きな要因だろうと思う。それを解消すべく,パソコンの指導や技術的アドバイスを仕事にしているようなところもあるのだが,筆者の元にその手の相談はまず来ないのが現実。

 結局,たいして仕事のない筆者はいつもジリ貧なのだが,一方,冒頭で述べた番組に出演していたタレントあたりは,取材費くらいもらえるのだろう。ひょっとすると,テレビ局もそのスマートスピーカーのメーカーからいくらかもっているかもしれない。たとえそれが,介護現場の問題解消につながらなくても。
 いつも何となく不公平を感じている。

● 資金不足と人手不足の根本原因

 まとめると,介護の現場は,資金不足,人手不足の問題で悩み続けている。テレビ局やタレントは,別にそうした問題の解消につながらなくても,どこかからお金は出る。日夜,お金や手間がかからない方法はないかと考えている筆者の元には,その手の相談は来ないのが現実。

 一方,政府やお役所はそうした問題解決のために何をしているか。出てくる案といえば,「ボランティアの活用を」とか「海外から人材を」といった話で,その「ボランティア募集」や「外国人の人材育成」にはお金(税金)を使う。そんなところにお金を使う前に,今の介護職の人たちの報酬を増やしてあげるという発想はないのだろうか。まぁ,ないからそうしたことに平気でお金を使えるのだろうけど。しかも,少なくともこれまでに受け容れた外国人は,あちらこちらで行方不明だとか。それで人材不足が解消すると考えているのだろうか。まぁ,解消しなくても報酬は受け取れるのだろうから,別に本気で考える必要もないか。それで,政府お役人の皆さんは,おそらく今の筆者の何倍もの金額を,国民が納めた税金から受け取れる。結果,介護現場はずっと資金も人員も不足したまま。
 いざ改善を求めると「社会保障費が増大するので必要だ!」と言って消費税率を上げる……というのが政府お役所の対応。それって,収入源のない障害者や要介護者の生活費からの徴収額も増やすことになるのですけど。「社会保障費」って,そうした人が安心して暮らせるようにするためのものじゃないの? 逆に苦しめてどーする? もちろんその増税分は,「なるべくお金も人手もかからない」方法で問題を軽減しようと考えている筆者の元になど来るはずもない。むしろ筆者も徴収額が増やされる側。
 では,増税分はどこへ行くのかというと,政府とお役所の人たちが考えた「改善策」に費やされる。たぶん「改善策を考えた」報酬として,政府とお役所の人たちで山分けもするのだろう。たとえその「改善策」が結果的に全く役に立たなくても持って行くのだろう。
 最初と最後をつなげれば,政府やお役所が,自分たちが作った制度を強制できるのをいいことに,一般人や障害者といった弱者からちょっとずつお金を吸い上げて自分たちだけ潤う仕組みを作って,一方的に押し付けているように見える。これが今の日本社会の構造的問題。
 介護の現場に,なぜ資金や人員が不足するのかって? それは問題を解消できない「人」が問題を解消できない「こと」でお金を使い込んでしまって現場までお金が回らないからではないか? その結果,現場で働く人の賃金を上げられない……そうした実態に気づいている日本人が「介護現場で働こう」と思うわけないのではないか? そこで,そうした実態を「知らない人」……つまり「外国人を」連れて来ようということだろうが,でも彼らがいざ介護現場の実態を知った時,自暴自棄的な行動に出る可能性は日本人と比べどちらが高いのか? ネット上には,既に同様な懸念を示す記事も見受けられるが,懸念したところで,もし今のまま介護の現場でできる工夫や対策がとられなければ,資金不足や人手不足は少しも軽減されず,そうした人たちを多く受け入れざるを得なくなるのではないか。将来,そうした人が多数を占めるようになった時,介護の現場はどうなるのか? 資金不足や人手不足よりもっと大きな問題に直面しそうな気もする。

● 資金不足と人手不足の解決を阻む要因

 いろいろグダグダと述べてきてしまったが,おそらくは,多くの人が「こういうことなのだな」と考えていると思う。

介護の現場で資金不足や人手不足がいつになっても解消しないのは,政府やお役所がまともな施策を打ち出せないから。

 が,これは筆者が実際に訴えたいことの半分ほど。全体的にはこう。

介護の現場で資金不足や人手不足がいつになっても解消しないのは,政府やお役所が出してくる「まともでない施策」にただ従っているだけで,問題解消のために「現場でできること」を考えたり探したり,試したり……といったことをほとんどしないから。

 端的には,問題を解消したいなら「現場でできること」を探して実践するしかないのに,ほぼ誰も何もしていないのではないかということ。
 政府やお役所が,「介護現場の資金不足や人手不足の解消のため」と称して出して来る案が「ボランティアの活用を!」とか「外国人労働者を!」などといった内容で,介護現場の状況をここまで悪化させた責任を省みている要素などこれっぽっちもないことを見れば,そもそも彼らに「まともな施策」を期待すること自体が間違いでしょ。何より今まで政府やお役所が打ち出してきた施策が,今の介護現場の諸問題を生み出してきたようなもの。だから,今後もそうやって彼らが作り出す制度や施策などを忠実に守る「だけ」なら,「今のまま」なのは当然で,何も問題は解消しない。彼らの「決めごと」に従っているだけでは何も改善しないと早々にあきらめ,「現場でできること」を探したり試したり,現場主導で改善の方法を探るしか,問題解消の道はないと思う。

 筆者が「ゆるい技術」を優先的に考えるのは,資金不足,人手不足の状況の下でも「現場でできること」を増やせれば,そうした問題の解消につながる可能性も高まるのではないかと思っているため。
 ただ,残念ながら現場からの反応は皆無に近い。筆者の目には,現場自体が問題の改善に前向きには見えない。

 以前,O.T(作業療法師)と呼ばれる方々の 20 人ほどの集まりに顔を出す機会があった。それらの人たちが抱える問題を共有するために,簡単なネットワークを作ろうということだったと思う。
  O.T とは,筆者の認識では,障害のある人に残された体の機能の低下を防いだり,拡張させたりする訓練師で,主に何らかの「もの」を操作させる手段を使うことが多いという印象。だから,筆者が考えているような「簡単な工夫で様々な操作をできるようにする」方法には,きっと需要があるはず……そう考えていた。
 案の定,「自己紹介」の段階で,出るわ出るわ「自分の職場では××で困っている」とか,「○○したくでもできなくて」とか,様々な悩みが噴出。ひとり一人があまりにも長く話していたため,結局,その「集まり」のために割り当てられた時間内に数人しか自己紹介できず,筆者の自己紹介も簡単にしかできなかったというレベル。
 とりあえずは,その「ネットワーク」もスタートした。「メーリングリスト」と呼ばれるウェブサービスを利用し,その方たちのメールアドレスもすべて登録された……はずだった。
 しかしフタを開けてみれば……書き込みをしているのは筆者だけだった。お金をかけなくても「こんな工夫ができる」とか,「自立」に結びつく工夫ができれば「こんな手間が軽減される」……そんなことをもっと伝えたかった。「そうしたことで悩んでいる人は教えてください」と何度書き込んだことか。O.T の皆さんのメールアドレスが正しく登録されていれば,筆者の書き込みは全ての人に届いていたはずだが,誰からも何の反応も来なかった。
 たとえば,最初に述べたタレントのような「棒を落とすとダメなんです」といった具体的な「悩み」の書き込みがあれば,「ゴムひもで吊ったら?」的な対策を考えて伝えられるが,どんなことで悩んでいるのか何の書き込みもないのでは,対策など考えようがない。
 結局,数年間,他の誰の書き込みもないまま,そのメーリングリストの提供会社の都合でサービスは打ち切りとなった。あの止めどなく噴き出していた O.T の皆さんの悩みはどこへ行ってしまったのか。

 ひょっとして,一瞬「ミュンヒハウゼン症候群」かなと思ったりもした。これは「他人の気を引くため,自分の『たいへんなのよー』を強くアピールする」という,一種の精神疾患。実際の症状は「自傷行為」にまで及ぶらしいから,まぁ正真正銘の「それ」ではないのだろうけど。でも,最初に出てきたタレントも同様,解決策を考えて欲しい云々ではなく,多くの人に聞いてもらえる場で「たいへんなんですー」と言いたかっただけでは,いずれにしても,何の解決にもならないよね。
 政府お役所があまりにも頼りないから,介護現場が病みかけているのかなんて思ってしまいそう。症状が重くならないうちに,その頼りない人たちと決別すべきではないかと思う。

 感じたのは,「問題解消のために何とか工夫しようとする気が『現場に』ない」のではないかということ。少なくとも筆者にはそう見える。資金不足や人手不足などの介護現場の問題は,政府やお役所が作る制度で改善が期待できないのは,述べたとおり。だから,少しでもそうした問題を軽減したいなら,制度に従っている「だけ」ではダメで,少しでも「現場で」工夫できることを見つけるしかないのに,現場が何の行動も起こさないのでは,解消するはずがない。
 どこかに,どんなに「いいエンジン」を搭載した自動車があっても,それを探し求めてそこに乗り込み,その「エンジン」をかける人がいなければ,自動車が前に進むことはなく,役に立たない。どこかに,どんなに「いいアイデア」があっても,その方法を探し求めて実践する人が誰もいなければ,問題は改善しない。介護の現場が,諸問題の解消につながりそうな「いいアイデア」を積極的に探し求めて行動しなければ,事態は改善に向け前進することもないと思う。「探し求めない人たち」ばかりでは,絶望しかない。問題が改善する方向に向かうかどうかは,「現場の人たち」がいつその行動を起こすのか,ではないかと思う。

 紹介した「ひもをぶら下げれば済むんじゃない?」的な「ちょっとした工夫」で解消できる介護現場の問題は,他にもけっこうあると思う。資金も人員も不足している現場にこそ,こうした工夫がもっと活かされていいような気がするが,あまりにも少ないような気がしている。
 障害者の「自立」とは「自分でできる」ことを増やすことだと思う。自立が促進すれば,「つきっきり介護」の必要性も軽減され,介護現場の「負担軽減」につながると思う。ただ,そのために「××という機器が必要」だとか,「設定や調整する人が必要」ということでは,本質的な負担軽減とは言えないと思う。「現場のちょっとした工夫」でできることが重要だと思っている。
 筆者は今後も,資金も人の手間もかからずに済みそうな「ちょっとした工夫」をいろいろ考え,介護現場の諸問題に対峙して行きたい。



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