● 一般的な用途
[V] キーの代表的機能は以下の通り。詳しい解説は後述各章を参照。
- 文字「V,ひ」の入力
- 「表示」メニューの表示
- 貼り付け(ペースト)
- 形式を指定して貼り付け(特殊ペースト)
● 文字「V,ひ」の入力
単独で押すとアルファベットの「v」が,[Shift] キーと同時に押すと「V」が入力される。vの文字コードはVより 32 大きい。つまり,二進数では第5ビット(2^5 の位)が異なるだけ。
なお,かな入力モードでは「ひ」が入力される。「は行」の文字のうち,このキー周辺にあるのは「は」だけで,「は行」のかな文字の配置は,なぜかバラバラである。
筆者が日本語入力で使う「NICOLA(親指シフト)配列」では,シフトなしで「ふ」,左親指(同手)シフトで「や」,また右親指(クロス)シフトで「ぶ」が入力される。
◆ 文字コード 22(SYN)の入力
「ターミナル」など,文字のみやりとりするコンピュータ通信では,[Ctrl]+[V] のキー操作で文字コードの 22 が入力されることがある。ASCII コードの 22 は SYN(Synchronous idle)と呼ばれるコントロール(制御)コードで,文字通信以外であまり重要性はないが,意味としては「同期」で,「接続されているか」を確認したい時や,通信データがない時に切断されることを防ぐために送信されたりする。
通常は画面に表示される文字はないが,このコードを可視化する方法として“^V”などの表記が使われることがある。ちなみにVはアルファベットの 22 番目の文字で,文字コードは 86〔十六進表記 56H〕。SYN
の文字コードより 64〔40H〕だけ大きい。つまり二進数では第6ビット(2^6 の位)が異なるだけ。
● 「表示」メニューの表示
多くのアプリでは,[Alt]+[V] のキー操作で「表示」メニューを表示する。書いていてややこしいが,メニューバーにある「表示」メニューのこと。たいていこのメニュー内にある項目は,特に内容に変更が加えられるものではなく,表示され方が変わる程度。たとえば「ズーム」で拡大したり縮小したりして見るとか,ツールバーやステータスバー表示の有無や,全画面表示の切り替えなどの項目はこのメニュー内にある。
● 貼り付け(ペースト)
多くのアプリで [Ctrl]+[V] のキー操作で「貼り付け(ペースト)」機能が働く。いわゆる「コピペ」の「ペ」のほう。
この方法では,たいていの場合,クリップボードのデータ……つまりコピーや切り取りした元のデータと,できる限り同じ状態で貼り付けられるのが原則。たとえば,ウェブ記事をコピーして [Ctrl]+[V] のキー操作で貼り付けた場合は,「見出し」は見出しとして,「箇条書き」は箇条書きの書式で貼り付けられる。同様に,ウェブ記事や表計算ソフトから表(画像を除く)をコピーし,ワープロや表計算ソフトに貼り付けると,やはり「表」の扱いになることが多い。
▼ 表計算からワープロにペーストした場合 |
◆ 表計算ソフトでのペーストは要注意
表計算ソフト内でペーストする場合は注意が必要。というのは,元のデータにセルを「相対参照」する計算式が含まれていた場合,元の位置で計算に使われていたセルとペースト先のセルの位置が異なれば,参照されるセルも異なるので,計算し直された値も異なることが多いため。
「相対参照」とは,たとえば「出納簿」などでは,一番右端の「差引残高」の欄に,以下のような内容の式を記入することになるだろう。
上の残高のセルの金額に左2つ隣の「入金」欄にある金額を足し,すぐ左のセルの「出金」欄の金額を引いた金額を求める計算式
これを同じ「残高」の列の下のセルにコピーすれば,そこで同じ計算をするから,「入金額」か「出金額」を記載すれば自動で残高が求められるようになる。もうお気付きと思うが,この場合はペーストした式が同じでも,表示される金額は異なることになる。言い換えれば,「ペーストした先の表示結果が元と同じにならない」のだ。左2つと上のセルの値が異なるわけだから,同じ式でも計算結果はもちろん異なる。
同じ表示を得たい場合は,以下の2つの方法がある。
- A. セルの位置も含めた同じ「計算式」をペースト
- B. 表示されている値そのものをペースト(→「形式を指定して貼り付け」の章を参照)
B. の方法は次章の「形式を指定して貼り付け」でできるので,そちらを参照のこと。また,A. の場合も「同じ計算式」ではなく,「参照をペースト」したほうがいい場合が多い。それもやはり次章を参照。
「同じ計算式をペーストする」方法は,以下の手順による。
- 1. 元の計算式のセルで [F2] キーを押し「編集モード」にする
- 2. [Ctrl]+[A] などで数式全体を選択
- 3. [Ctrl]+[C] でコピーする
- 4. 一旦 [Enter] キーを押してそのセルの編集モードを終了
- 5. ペーストしたいセルに移って [Ctrl]+[V] でペースト
こうすると元のセルと同一の式がペーストされるので結果も同じになる。ただしこの方法は,元の計算式セルは1つだけしか対応できない。ペースト先も,たいていは1つのセルだけが対象になる。複数のセルをまとめてペーストしたい場合は,次章の「参照をペースト」などの方法がいいだろう。
また,たいていは「同じシート内」で通用する方法で,異なるシートにペーストすると,やはり元のセルの値が異なるために結果が異なることが多い。異なるシートでこのやり方で表示結果を同じにしたい時は,元のセルの計算式を「シート名から」指定する必要がある。
なお,これはあくまで「相対参照」を含む計算式をペーストする場合のもので,含まれるセルの参照が全て「絶対参照」の場合は,気にせずにペーストしても同じセルが参照されるため,表示結果も同じになる。
絶対参照とは,どこにペーストしても,参照するセルが同じになるような指定方法のこと。たとえば「消費税率」が E5 セル,税抜き金額が
F7 セルに記載されてる時に,税込み金額を求めたい場合の計算式は,“=F7*(E5/100+1)”……としたいところだが,これを下のセルにペーストすると“=F8*(E6/100+1)”となり,消費税率のセルを参照しなくなってしまう。どこにペーストしても正しく「消費税率」のセルを参照させるには,E5 セルだけ「絶対参照」にする。方法は,変化させたくない部分の前に $ マークを付ける……つまり“=F7*($E$5/100+1)”といった計算式にすることで,この数式をどこにペーストしても,消費税率の
E5 セルを示す部分は変化しないようになる。ただし,F7 のほうは変化するので,これでも単純ペーストでは異なる値になる。単純なペーストで常に同じ値にしたい場合,計算式に含まれているセルの参照が「全て絶対参照」である必要がある。
ちなみに,$ マークが2つあるのは,「行」と「列」のどちらも変化させない指定とするため。$E で「E 列」が変化しなくなり,$5 で「5行目」であることが変化しなくなる。つまり前述の例は,税率が一律の場合。たとえば「軽減税率」が混ざっているなどで,行によって税率が異なるような時は,それぞれの行の E 列に税率が記載されていれば,“=F7*($E7/100+1)”といった数式にすることで,下の行にペーストすると“=F8*($E8/100+1)”となって,税率のセルは同じ行にあるものが参照される。ただし,これを同じ行の別の列にペーストすると,$E8 は変化しないが,F8 の F は変わる。F も変えたくない時は,そちらにも $ マークを付けて,“=$F8*($E8/100+1)”などとする。
● 形式を指定して貼り付け(特殊ペースト)
多くのアプリでは [Shift]+[Ctrl]+[V] のキー操作で特殊な貼り付け機能が働く。たいていは「形式を指定して」貼り付けができる。
通常のペーストとの違いは何か。たとえばワープロなら,元のデータが「見出し」や「箇条書き」などの書式を含んでいれば,通常ペーストした時にも,その書式は極力維持される。すると,たとえば「引用として」ペーストしたいような時は,引用内に「見出し」など不要なはずだが,「見出し」を含むものを普通にペーストすると,引用内でも自動で「見出し」の書式になってしまうため,その書式を解消する必要が生じる。表計算のデータをワープロに張り付けた場合も,「表」の扱いになるため,「内容の文だけ使いたい」ような場合,表の枠から外に出して枠線を消す……などといった操作をする必要が生じる。
表計算内でも,前章のように,通常のペーストでは計算式の相対指定はペースト先の計算結果が異なるわけだが,同じにしたい場合もある。
いずれにしても,通常のペーストでは「余計な手間」となる感は否めない。が,「形式を指定して貼り付け」では,そういした手間の問題を解決しうる,調整の利くペーストができる場合がある。
◆ ワープロの場合
以下は,表計算ソフトでコピーしたデータを [Shift]+[Ctrl]+[V] で筆者が使っているワープロソフト(OpenOffice Write)にペーストしようとした時に出るダイアログの例。
▼ 形式を指定して貼り付け(ワープロ) |
細かい機能はソフトによって異なるが,共通して利用価値が高そうなのは,「書式設定されていないテキスト」としての貼り付け。これは,たとえばコピペで引用したい時に,引用元に「見出し」や「箇条書き」の項目があった場合,単純なペーストでは極力それらを維持しようとするので,ペースト先でも「見出し」や「箇条書き」の書式になり,元が表計算だった場合は,表が埋め込まれるようなペーストになる。ただ,どちらの場合も,引用の中で使う時はそれら書式は不要なことも多い。そんな時,この [Shift]+[Ctrl]+[V] で貼り付けると,たいていは「どのような形式で貼り付けるか」を指定できるダイアログが出て,「書式設定されていないテキスト」として貼り付ける選択ができる。この形式のペーストで維持される書式は「改行」くらいになり,後から引用として独自の書式設定をすることが容易になる。
たとえば表計算ソフトのデータを書式設定のないテキストでワープロに貼り付けると,以下のように各行ごとに1行ずつの単純な文となる。
▼ 書式設定のないテキストで貼り付け |
◆ 表計算の場合
表計算ソフト内で [Shift]+[Ctrl]+[V] キー操作をすると,以下のような多種多様な貼り付け形式が使える。詳細は後述の各項を参照。
- 値のペースト……計算結果だけを貼り付ける
- 参照(リンク)ペースト……元のセルを参照する式を貼り付ける
- 書式ペースト……元のセルの書式を適用する
- 行列入れ替えペースト……縦と横の並びを入れ替えて貼り付ける
以下は,筆者が使用している表計算ソフト(OpenOffice Calc)内でコピーしたデータを [Shift]+[Ctrl]+[V] でペーストしようとした時に出るダイアログの例。ちょうど「値のペースト」を操作中。
▼ 形式を指定して貼り付け(表計算) |
★ 値のペースト
元のセルに計算式が埋め込まれていた場合でも,そこに表示されている計算結果の値だけペーストする形式。そのため,ペースト後に編集して元の計算式の結果が異なっても,ペースト先の値は変化しない。言い換えると,ペースト元のセルの値が消えても,ペースト先は残る。
筆者はこれを「内容の記載方式の変更」に利用することがある。たとえば,日付で,月がA列,日にちがB列に記載されているものを,1つの列に“9/27”などとまとめて表示したい場合,3行めなら以下のような式を記載する列を作る(2022 は西暦年)。
=DATE(2022;A3;B3) (←エクセルはコンマで区切る)
あとはそのセルの書式設定で「M/DD」などと指定すれば,目的の表示になる。それを,A列に「値と書式」を指定してペーストして,B列を削除すると,元の日付はそのままで1つの列にまとめることができる。
方法はアプリによって異なるが,筆者が使っている OpenOffice Calc の場合は,前掲した「形式を指定して貼り付け(表計算)」の画像で,「テキスト,数,日付と時刻」だけにチェックし,少なくとも「数式」のチェックは外して [OK] する。
★ 参照(リンク)ペースト
元のデータとペースト先の表示が同じになるという点で,前項の「値のペースト」と似た結果だが,「参照(リンク)ペースト」では,元の計算結果が変化するとペースト先もそれに合わせて変わる点が異なる。
元のデータが消えてしまうとペースト先も消えてしまうので,前項の「記載方式の変更」のような使い方はできない。一方,同じ値を複数のセルに「転記」して表示させたい時などに便利なペースト。
方法はアプリによって異なるが,筆者が使っている OpenOffice Calc の場合は,前掲した「形式を指定して貼り付け(表計算)」の画像で,下部にある「リンク」にチェックして [OK] する。
★ 書式ペースト
通常のペーストでも「書式」は反映されるが,内容を無視して「書式のみ」貼り付けできることを知っていると便利なことがある。
たとえば「小計」や「総計」などは,他とは異なる太めの文字にするとか,「消費税額」は少し小さめにするなどで表示させることがあると思うが,「表」というのは数値の枠が大量にあるので,それらにいちいち太文字にしたり小文字にしたり……といった操作をしていると手間がかかる。そこで,ひとつだけそうした書式指定をしておき,同じ書式にしたい他のセルをまとめて選択して,この「書式ペースト」を使うと,それらのセルの書式の設定が一度にできるという便利な方法。
方法はアプリによって異なるが,筆者が使っている OpenOffice Calc の場合は,前掲した「形式を指定して貼り付け(表計算)」の画像で,「書式」にチェックする。それより上にある「すべて挿入,テキスト,数,日付と時刻,数式」のチェックを全て外しておいて [OK] すると,既にある「セルの内容は変えず」に,書式のみ適用することができる。
★ 行列入れ替えペースト
縦と横の並びを入れ替えて貼り付ける。
たとえば,いくつかの製品の売上表などでは,列で製品を分け,月ごとの売上を下向きに記載することがあると思うが,すると月ごとの合計の売上は右端に縦に並ぶ。でも,月ごとの合計の売上だけの表を作りたい時は,縦長ではレイアウトしづらい。そこで,このペーストをうまく利用すると,月々の合計売上を横に並べた表の作成が簡単にできる。
▼ 行と列を入れ替えて貼り付け |
前述の「参照(リンク)ペースト」と組み合わせると,売上が修正された時に自動で「月々の合計売上」の表の数値も変化するようになる。
方法はアプリによって異なるが,筆者が使っている OpenOffice Calc の場合は,前掲した「形式を指定して貼り付け(表計算)」の画像で,下部にある「行と列の入れ替え」にチェックして [OK] する。