● 一般的な用途
[P] キーの代表的機能は以下の通り。詳しい解説は後述各章を参照。
- 文字「P,せ」の入力
- 印刷
● 文字「P,せ」の入力
単独で押すとアルファベットの「p」が,[Shift] キーと同時に押すと「P」が入力される。pの文字コードはPより 32 大きい。つまり,二進数では第5ビット(2^5 の位)が異なるだけ。
なお,かな入力モードでは「せ」が入力される。五十音の「さ行」はこの「せ」以外は中央やや左にまとまっているが,「せ」だけはなぜか少し右に間をあけて離れた位置に追いやられている。「せ間離れ」しているということか?
筆者が日本語の入力で使う「NICOLA(親指シフト)配列」ではシフトなしで「,(カンマ)」,右親指(同手)シフトで「ぇ(小文字)」,左親指(クロス)シフトで「ぴ」が入力される……「P」だけに?
じつはこの位置,ちょいと小指を伸ばせば打てるんで,そこにカンマがあるのはわりと便利。筆者サイトの記事は,ほとんど読点(、テン)の代わりにカンマが使われているのは,その影響。
でもなぜ「読点」ではなく「カンマ」なのか。じつは公文書では長らくカンマと句点(。マル)が使われることが多い。で,NICOLA の元になる「親指シフト配列」を考案したのが「富士通」……といえば,もう半ばオヤクショみたいな会社だし,公文書の作成なども請け負っていただろうし,読点よりカンマを打ち易い位置に持って来た理由はお察し。
ただそれも昔の話になりつつあるよう。2022 年の1月に公表された国家公務員向けの文書作成の手引きでは,「読点(、)を原則とする」と改められたらしい。
でも,元々「カンマが原則」になったのは,「横書き」で文書を作る時はカンマのほうが「見易い」的な理由だったという記事も見かけたから,それならそれでもよかったような気もする。それで打ち易い位置にあるようなものだし。縦書きなら読点のほうが断然見易い気がするが。
ちなみに NICOLA では読点は,カンマ [P] の右横の [@] キーで打てる。考えようによっては,大差ない。
◆ 文字コード 16(DLE)の入力
「ターミナル」など,文字のみやりとりするコンピュータ通信では,[Ctrl]+[P] のキー操作で,文字コード 16 が入力されることがある。ASCII コード 16 は DLE(Data Link Escape)と呼ばれるコントロール(制御)コード。元々の機能は,このコード直後の「制御コード」を,本来の機能を無視して「文字の一部」のように扱う意味だったと思われる。たとえば ASCII コード 3 は「ETX(テキスト終了)」を表す制御コードで,通常はそこで文字転送が終わることを意味するが,DLE ETX という並びでは,「終了」ではなく単なる ASCII 3 の文字コードで,まだ続きがある……と解釈されたのではないかと想像している。ただどれほど使われたかは分からない。この DLE 自身も目に見える「文字」のない制御コードなので,エディタなど表示が重要なソフトでは扱いにくく,そちらでは文字によるエスケープ表現(DLE なら“\x10”など)が多く使われるので,DLE コードの存在はあまり重要ではない。
通常は画面に表示される文字はないが,このコードを可視化する方法として“^P”などの表記が使われることがある。ちなみにPはアルファベットの 16 番目の文字で,文字コードは 80〔十六進表記 50H〕。DLE の文字コードより 64〔40H〕だけ大きい。つまり二進数では第6ビット(2^6 の位)が異なるだけ。
● 印刷
多くのアプリでは,[Ctrl]+[P] のキー操作で,印刷のダイアログが表示され,印刷できる。
◆ 「コピー」って言うな
少し前に,ウチの母からの連絡で,「パソコンに届いたメールの写真をコピーしたいのだけど,どうやるの?」とか言って来た。その写真をワープロの文書などに貼り付けてアルバム的ファイルを作るとか,他の人宛メールに貼り付けたい時の「コピー」なら [Ctrl]+[C] などのキー操作だから,その説明をしていたのだが……何だか話がかみ合わない。
「コピー」と言えば,パソコンでは「クリップボード」にコピーする操作が最も使われるから,そんな説明をしていたのだが,「そうじゃなくて『コピー』すんのよ」みたいな。
いろいろ話を聞いているうち,どうやら「印刷」のことを言っているらしいと分かった。せめて「プリント」とか,少なくとも「印刷」って「日本語」くらい出してくれりゃいいのに,「コピー,コピー」と繰り返されたため,話がちんぷんかぷんだった。紙が出てくるものはみんな「コピー」なのかよ。
しかし,印刷ならばもっと簡単で,たとえば画像のプレビュー画面で見ていれば,下に並んでいるアイコンに「印刷」のボタンがあるから,そこを押せば印刷用のダイアログが出る。……のだが,それが分かってない雰囲気。そんな簡単なことが,なぜ分からないのか。
その時は,「VNC」という方式を使って,筆者の自宅から母が使っているパソコン画面を見ることができたんで,それを見ながら教えた。
アイコンというのは,マウスカーソルを乗せた時に「ツールチップ」と呼ばれる簡単な文字の説明が出るから,それで「印刷」と出るものを探せばいいわけで,片っ端からマウスを乗せて行けば分かると伝えた。ところが! 並んでいるアイコンの右から3~4番めくらいに「印刷」があり,母は右端からひとつずつマウスを乗せていたから,直ぐ分かると思っていたのだが,2個くらいマウスを乗せ「印刷」ではないと分かると……その時点であきらめてしまい,マウスカーソルは窓から外れてどっかへ行ったまま操作を終了したっぽい。その次辺りなのに! 画像プレビュー画面のアイコンは十個くらい並んでいただろうか。最初の2つでなぜあきらめるかな。「最初の2個であきらめられていた」ため,印刷のボタンに辿り着くまで十分前後かかった気がする。あきらめなければ,数秒で気付いたはずなのに……。
その「画像プレビュー画面」でできたのかどうかは分からないが,今考えれば,この [Ctrl]+[P] 操作を教えればよかったのかなもと思う。
ちなみに,その時は印刷までに至らず,一時的に印刷は保留して……その後,あろうことか,その状態でパソコンを開けたまま「買い物」に出かけ,その間に猫に [Shift]+[DELETE] キーを押され,「印刷」したかったメールをパソコンからキレイに削除された母なのであった。
その一部始終を,離れた場所から VNC で目の当たりにしていた筆者の脱力感を察していただきたい……。