● 一般的な用途
[ESC] キー(エスケープキー)の代表的機能は以下のとおり。詳しい解説は後述の各該当章を参照。
- 取り消し
- メニュー表示
- 切り替え
「エスケープ(escape)」とは「脱出」的な意味。文字コードとして
27(十六進表記で 1B)が割り当てられているが,表示できる文字ではない。
どこから何が「脱出」するのかというと,コンピュータは元々,欧米で発達して来たものであるため,扱う文字はアルファベットと数字だけ程度の文字種の数で済んだ。そのため,当初の「文字コード」では,7ビット……つまり2の7乗で 128 種類程度の文字が扱えれば済んでいた。だから,そのままかな文字や漢字を扱うのは困難だったため,この「エスケープ」という文字コードを使って「ここからはアルファベットや数字の文字コードを組み合わせて日本語として扱ってね」という印を作り,それを文章データに埋め込んで日本語文章に対応していた。他の国の言語でも同様な対応をしていた。また,文字の「色」は何だとか,「文字をどこに表示するか」といった文字以外のデータの表現にも使われることもある。つまり,文章の文字データの中で,英数字を扱う状態から「エスケープ」して,他の言語の文字コードの規格へ,時にはその逆,あるいは色指定など,文字以外の何らかの機能を示すデータの扱いにする……といった意味の文字コードとしてよく使われる。
ただそれは「文字データの中で」の話。キーボードで [ESC] キーが押された時のふるまいは,また別になる。
● 取り消し
言うまでもない「取り消し」の機能。
「取り消し」とは,進めようとしていた操作を中断すること。たとえば,文章作成などの作業が終わり,ワープロを「終了」させようとした時に「終了しますか?」といった確認画面で「取り消し」すると,その「終了の操作」が取り消され,ソフトは「終了しない」ことになる。
◆ 「ダイアログボックス」での取り消し
「ダイアログボックス」とは,コンピュータ側から操作者に何か確認を求めるメッセージと選択肢のボタンなどを表示する窓のこと。
▼ ダイアログボックス |
ダイアログボックスに表示された[キャンセル]のボタンを押す代わりに,[ESC] キーを押しても同じ操作として扱われることが多い。もちろん[キャンセル]の代わりに[取消]のボタンがあれば,たいていは同様に扱われる。
また,やはりダイアログボックスの「閉じる」ボタン(多くは窓右上にある[×]ボタン)を押すのに等しい場合も多い。この場合,ダイアログボックスに表示されているボタンに[キャンセル]に当たるものがなくても,[ESC] キーを押せばたいていダイアログボックスは消える。
いずれも,マウスで操作している時,マウスカーソルをそこに持って行く必要がないので,操作が早くてラクになる。
◆ 「ドラッグ」の取り消し
「ドラッグ」を取り消す操作に使える場合もある。
ファイルや画像,文章データのコピーや移動をしようとしてドラッグしていて,その対象としているものの「間違い」に気づいた時,うっかりマウスのボタンを放してしまうと,そこにドロップしてしまい,なるべきではない結果を招く場合がある。ドラッグ中に間違いに気づいた時は,マウスのボタンを放さないで [ESC] キーを押し,「ドラッグ」していた対象のものの表示が消えたら,そこでマウスのボタンを放せば,多くの場合ドラッグは「なかったこと」になってくれる。
◆ 「メニュー」の取り消し
「プルダウンメニュー」や「アプリケーションメニュー」などが表示されたままで,煩わしかったり操作が続けられないような時は,たいてい [ESC] キーを押せばメニューは消え,元の操作に戻せる。
◆ 日本語入力の取り消し
日本語の変換中に [ESC] を押すと,入力しかけていた未確定の文節を取り消せる。
◆ その他の取り消し
その他,動きがおかしい時,思い通りに操作ができないような時は,やはり [ESC] キーを(場合によっては何度か)押せば,元通り操作ができるようになることが多い。操作できなくなる状態は,何か操作者が気づかないまま操作のモード(状態)が変わってしまって起こることが多い。たとえばワープロ上で文字以外のもの(画像など)が選択されていると,文字入力できなくなる場合がある。その状態を「取り消す」ことにより通常のモードに戻るため,また文字入力ができるようになる。
同様に「ドロー」の描画などの時,その選択を「取り消す」ことにも使われる。
● メニュー表示
昔あった「一太郎」というワープロソフトでは,[ESC] キーによってメニューの項目を選択するようになっていたが……まぁ,昔の話。
とはいえ,現在は以下の操作で「スタートメニュー」が表示される。言ってみれば,[Windows] キーを単独で押すのと同じ。
[Ctrl]+[ESC]
マウスで「スタートボタン」をクリックしても,動作が重くてなかなかメニューが表示されない時や,スタートボタンが別の窓にかぶっていたり隠れままになってマウスでクリックできない時は,この操作によってスタートメニューを素早く表示させることができる場合がある。
またこの表示の方法は,障害者に対応するための「固定キー機能」を使っている時にスタートメニューを表示させるのに便利なことがある。「固定キー機能」とは,[Shift] や [Ctrl] キーのように,そのキーを「押しながら」別のキーを押すのに使うキーを,「押しながら」ではなく,一旦指を放してもその後に押すキーに「押しながら」と同じ効果を与える機能のこと。ただ,その機能が「[Windows] キー」にも働くために,スタートメニューを表示させたい時にちょっと面倒なことになる。「[Windows] キー」では,そのキーを押して直ぐに放すことでスタートメニューが表示されるが,「[Windows] キー」にも「押しながら……」で働く機能があるため,「固定キー機能」が有効の時には「直ぐ放す」扱いにするために「3回押す」必要が生じる。「固定キー機能」使用中は3回押さないとスタートメニューを表示しなくなってしまうわけだ。
そこでこの [Ctrl]+[ESC] という操作を使えば,[Ctrl] → [ESC] という「順次押し」の操作でスタートメニューを表示できる。まぁ,押す動作が1回減るだけの話なのだが,頻繁に使う人には便利だと思う。
筆者は,パソコンをとっととシャットダウンさせたい時は,よく以下の操作をしていた。
[Ctrl]+[ESC] → [U] → [U]
ただ,古いパソコンの話で,今でもこの方法が使えるかは知らない。
● 切り替え
以下の操作で,使用中のアプリを切り替えるのに使える。
[Alt]+[ESC]
よく知られるのは [Alt]+[TAB] の操作かもしれないが,[ESC] を使うと「表示される窓が」切り替わるため,内容を見て操作ができる。