● 一般的な用途
[TAB](タブ)キーの代表的機能は以下のとおり。詳しい解説は後述の各章を参照。
- アプリの切り替え
- タブの表示切り替え
- セルのフォーカスを横(右または左)に移動(表計算)
- 選択オブジェクトの切り替え(画像など)
- 次のリンク,またはフォーム入力項目に移動(ブラウザ)
- 水平タブ: 次の字の開始位置を右の特定位置に(ワープロ等)
[TAB] キーは何らかの「切り替え」をするのに使われることが多い。
多くはこのキーを押すと,文字コードの9が入力される。ASCII コードも,9は HT(水平タブ→Horizontal Tabulation)と呼ばれるコントロール(制御)コードで,「次に印字する文字を現在位置より右の特定位置からにする」的な意味を持つ。詳しくは「水平タブ」の章を参照。
通常は画面に表示される文字はないが,このコードを可視化する方法として“^I”などの表記が使われることがある。ちなみにIはアルファベットの9番目の文字。Iの文字コードは 73〔十六進表記 49H〕で,水平タブの文字コードよりも 64〔40H〕だけ大きい。つまり第6ビット(2^6 の位)が異なるだけ。
● アプリの切り替え
[Alt]+[TAB] のキー操作で,表示中のアプリを切り替えられる。この操作では,直前まで使っていたアプリに最初に切り替わる。たとえば,3つ以上のアプリを使っていても,Aアプリから [Alt]+[TAB] のキー操作1回でBアプリに切り替わった場合,次に [Alt]+[TAB] 操作1回では,またAアプリに切り替わる。そのため,[Alt]+[TAB] のキー操作「1回ずつ」で切り替えができるのは,2つのアプリだけになる。他のアプリに切り替えたい時は,[Alt] キーを「押したまま」にしておき,[TAB] だけ繰り返し押すことで可能になる。
多くはこのアプリ選択中,実行中アプリの一覧が表示される。一方,[Alt]+[ESC] 操作でもアプリの切り替えはできるが,「一覧表示」はなく,表示されるアプリの窓が直接切り替わる。
アクセシビリティ(使用者補助)の「固定キー機能([Alt] キーなどを押して放しても,直後のキーには『押したまま』扱いになる機能)」でこの「アプリ切り替え」をする時は,[Alt] キーの「1回押し」でも「押したまま」の扱いになることがあるよう。その場合,[ENTER] キーで決定する。ただ Windows のアクセシビリティは「でき」が悪くて,筆者の知る限り,時々そうならない例も見ている。そんな時は,[Alt]
キーを「2回押し」て,強制的に「押したまま」状態にすることで対応できる。これは [Alt] をもう一度押して「押したまま」を解除した時に決定される。
[Shift]+[Alt]+[TAB] のキー操作では逆順に切り替わる。この操作では,「最も使っていなかったアプリ」に最初に切り替わる。[Alt] キー「押しっぱなし」による振る舞いは,切り替わる順番が逆である点以外は [Alt]+[TAB] と同じ。[Alt] キーを押したまま [Shift] キーを押したり放したりすると,切り替え順も途中で切り替わる。
ただこの「直前まで使っていたアプリ」とか,「最も使っていなかったアプリ」の判断は,パソコンにより異なることがある。筆者が使っているものでは,「最小化」したアプリは,たとえ直前まで使っていても「最も使っていなかったアプリ」扱いになり,[Alt]+[TAB] 操作1回では切り替わらず,逆に [Shift]+[Alt]+[TAB] で最初に切り替わる。
● タブの表示切り替え
[Ctrl]+[TAB] のキー操作で,表示している「タブ」が切り替わる。
アプリの中には,「タブ」という機能によって,ひとつの窓に複数の案件(ファイルやウェブサイトなど)の表示を切り替えて扱えるものがある。[Ctrl]+[TAB] のキー操作は,この「見ている案件」を切り替えることができる。ブラウザならサイトやウェブ記事,ワープロやエディタなどのファイルを扱うアプリならそのファイルが切り替わる。また,ワープロや表計算アプリなどの書式や,コントロールパネルなどの設定画面でも,「段落,フォント,色,……」といった設定分類が「タブ」でまとめられていれば,この操作で切り替わることが多い。
「切り替わり順」は,かなりアプリに依存する。筆者が使っているブラウザでは,[Ctrl]+[TAB] の操作で必ず現在見ているサイトの右側のタブ(サイト)が表示され,最右端のタブでは最左端のタブに切り替わる。一方,「エディタ」と呼ばれるアプリでは,タブの表示順に関係なく,直前まで見ていたタブ(ファイル)に切り替わる。
[Shift]+[Ctrl]+[TAB] で逆順(ブラウザなら左のタブ)に切り替わる場合も多い。筆者の使っているブラウザでは機能するが,エディタでは機能しない。[Ctrl] キーを押したまま [Shift] キーを押したり放したりすると,切り替え順も途中で切り替わる。これはエディタも同様。
同様な機能は [Ctrl]+[ROLL UP] と [Ctrl]+[ROLL DOWN] のキー操作でも働く。これはブラウザでもエディタでも「必ず」右,または左のタブが表示され,ほぼ同じ操作ができる。
なお,筆者が使っている表計算アプリ(OpenOffice Calc)では,この操作でタブ(シート)は切り変わらない。ただし,[Ctrl]+[ROLL UP] と [Ctrl]+[ROLL DOWN] のキー操作での切り替えはできる。
● セルのフォーカスを横(右または左)に移動(表計算)
「フォーカス」とは,何か文字キーを押した時「そこに入力される」セルのこと。
表計算ソフトでは,[TAB] を押すとフォーカスが右隣のセルに移る。[Shift]+[TAB] では,左隣のセルに移る。
● 選択オブジェクトの切り替え(画像など)
図形や画像を扱うアプリでは,[TAB] キー操作によって,選択している「オブジェクト(部品)」を切り替える機能が働く。
ワープロや表計算で編集中の書面上に置いてある図形(オフィスでは「オートシェイプ」など)や画像が選択された状態では,それらの選択対象の切り替えも可能。
切り替わり方はアプリに依存する。だいたい直前まで選択していたものに最初に切り替わることが多いが,現在選択中のオブジェクトの近くにあるものの場合もあるよう。また,[Shift]+[TAB] で逆順に切り替わることも多い。
ただ,オブジェクトが多くなると,[TAB] キーによる切り替えで選択したいオブジェクトまで辿り着くのはたいへんになってくる。マウスなどを使ったほうが早いが,障害者などマウスが使えない方でも,[TAB]
キーを使えば,とりあえず図形を選択して調整することが可能になる。
● 次のリンク,またはフォーム入力項目に移動(ブラウザ)
ブラウザでは,[TAB] キーを押すとリンクやフォーム(ウェブページの記入欄)のフォーカスが次に移る機能が働く。
「リンクのフォーカス」は,多くの場合リンクが点線などで囲まれた状態になり,そこで [ENTER] キーかスペースキーを押すと,リンクをクリック(タップ)するのと同じ効果がある。
「フォームのフォーカス」とは,表計算のセルと同じく,そこでキー操作すると入力や変更できる項目のこと。記入枠なら,そこにカレット(文字カーソル)が表示されて,文字入力できるようになる。その他の項目は点線で囲まれたり,他と異なる色で表示されて,スペースバーやエンターキーを押すことでクリックすることと同等の扱いになる。
◆ イラつかされた思い出
筆者は以前,児童福祉施設で非常勤で働いていたことがあるが,それがちょうどネットが普及し始めて,福祉施設同士の情報交換やらボラさん募集やら,ウェブフォームからできるようになりつつあった頃。
ただそこの正規スタッフがフォームから何らかの申し込みをするのを見ていると……まずマウスを持ってカーソルを最初の記入枠……たとえば「施設名」の記入枠の上に移動させてクリックして,マウスから手を離してキーボードに移し,施設名を打ち込む。またキーボードから手を離してマウスを持ち,次の……たとえば「所在地」の記入枠の上にカーソルを持っていってクリックし,またマウスから手を離してキーボードに移し,住所を入力して……それを項目数だけ繰り返す,なンてことをしていた。面倒臭くね? 見かねてこの [TAB] キーの機能を教えたところ,しばらくその機能を使い……ひと言「便利ですね!」。いやいやいや,それくらい気付かんかなぁ。
でも,筆者はそれをどうやって知ったのか?……と問われても,答えにくい。別にマニュアルのようなものを読んだわけではないけど,気が付いたら [TAB] キーで入力項目を移動していた,という感じ。むしろそれがどこに説明されているのかさえ想像もつかない。
筆者にとって「コンピュータ」というのは,「手間を削減してくれる道具」という位置づけ。だから,コンピュータでやろうとすると「手間がかかる」ようになるなら,コンピュータでやる意味などないと思っている。逆に言えば,「コンピュータでできるようになっている」なら,そこには「手間がかからないような何らかの工夫がある」ことを暗黙の前提として考えているようなところもある。フォームなどの入力項目の移動なども,半分無意識的に「次の項目に移るための何か簡単な方法があるはず」という感覚で操作しているうち,[TAB] キーにその機能があると自然に気付いて使っていた,といった感じが一番近いだろうか。
その施設,知的障害児を受け入れていたが,概してパソコンの使い方などは,障害のないスタッフより障害児のほうが覚えるのは早い。通常の会話が成り立たないような子も,パソコンで「フリーセル」というソリティア……トランプを使った一種の「パズル」を始めると,ルールなど一切読まなくても,何度も「手詰まり」を繰り返しているうちにクリアしてしまう。やった方は分かると思うが,「フリーセル」というゲームは少し先を読む思考能力がないとクリアできない。それを,ルールを一切知らない障害児が「手詰まり」を繰り返すうちに規則性を「逆算」し,「手詰まり」を起こす原因を回避する方法に気付くようになって,クリアを達成するのだろうと想像している。
筆者が [TAB] キーで「入力項目移動」できると分かって使うようになった背景にも,適当に操作しているうち「このキーを押すと,こうなる」といった「規則性」を見出して,結果的にそれを「普段の操作」に利用するようになっていったようなところもあるのではないかと思う。
「障害児」の場合,自分が操作したことでパソコンが不具合起こそうと知ったこっちゃないから,操作はかなり適当。それでパソコンがどんな「振る舞い」をしたかを見て「試行錯誤」となって,「こんな操作をすればこうなるんだ」と覚えていくのだろう。言葉は不要。「習うより慣れろ」と言われるが,マサにそれを実践しているようなもの。ただ,「適当」なものだから「不具合」を発生させる可能性がゼロではない。筆者が非常勤で雇われていたのは,そうしたことが起きた時「元に戻すため」でもあったが,めったにそんなことは起きなかった。むしろ通常の事務で……つまり,スタッフが操作している時に不具合が起きて呼ばれた記憶のほうが残っている。ゲームより「オフィス」とやらが不具合を起こす可能性のほうがよほど高かったのだろう。だから,逆に正規スタッフのパソコン作業のほうが,何かと「変になったらどうしよう……元に戻せないかも」という不安で操作が慎重になるからだろうが,見ていてもどかしさを感じた。「知的障害とは?」……と考えさせられた。
その施設,筆者は他にもいろいろとパソコン関連のアドバイスをしていたが,ある時「雇い止め」された。その手の施設の運営がキビしいのはどこも同じだろうから,少しでも作業効率を向上させ,経費節約につながり運営の助けになればと思いアドバイスしていたつもりだったが,そんな筆者が「雇い止め」され,[TAB] キーの使い方さえ知らずウェブフォームの記入に数倍手間をかけていた正規スタッフが残った。「雇い止め」の理由は……「財政難」だとか。永遠に「財政難」な気がする。
◆ 今どきの「コンピュータ」の使われ方
前述のものは少々昔の話だが,その「効率を上げる方法を知っている者が外され,効率の低い従来のやり方を踏襲する者が残る」という傾向は,その頃からずっと続いているような気がしている。「コンピュータは手間を削減してくれる道具という感覚」だと書いたが,筆者は今どきのコンピュータの使われ方に,時々「相反するもの」を感じるのだ。
たとえば最近の話では,新型コロナウイルス用ワクチンの予約システム。「ウェブから申し込めるようにした」って話だから,述べたような「申し込みフォーム」を駆使してペーパーレス化し,効率化を図ったのかと思いきや,「高齢者のみ」という年齢制限のある申し込みに対し,生年月日がいつだろうと受け付けてしまうとか。令和生まれやら,未来の日付やら,ありえない日付……たとえば「小の月の 31 日」やらでも受け付けてしまっていたらしい。「高齢者」が対象なら「昭和生まれ」に限定したっていいくらいなのに。
また,自治体から送られたワクチンの整理番号を確認する仕組みにもしていなかったらしく,適当な番号さえ入れれば受け付けてしまうようで,一人で番号を変えて「下手な鉄砲」式に何件も申し込みした人もいたらしい。そればかりか,その番号がかぶる(前に同じ番号で別の人の予約がある)と,前の人の予約は勝手にキャンセルされてしまうとか。それが本当なら,「正しい番号」で申し込んでも,後から同じ番号でウソの申し込みをした人の予約のほうが優先されてしまうことになる。
こうしたことがネットで騒がれ始め,一部のマスコミが事実確認のために述べたような不具合が実際に起こるかどうか確認したら,そのことに対して防衛省が抗議したりしていた。が,人がやることである以上は「間違い」もあるだろう。筆者としては,正しいかどうか確認する仕組みを組み込まず,「間違い」の可能性のある申し込みでもそのまま受け付けてしまうシステムのほうがどうかと思うのだが。日頃様々な訓練をしている防衛省が,その点に気付かないというのも考えにくいが……あるいは「そういう抗議を出せ」とどこかから圧力があったのか。何たってそのシステムを作った会社の顧問があの人……まぁ,気になった方は「ワクチン予約システム 顧問」で検索でもしてみて欲しい。
そもそも「間違い」を申し込み段階で検出して扱わない仕組みにしておくことで,業務の効率化が図れるのではないか。少なくとも「日付」なんて全部数字なんだし,コンピュータだからワクチンの接種対象者は「何年の何月何日以前に生まれた人」と確認をする仕組みくらい簡単に仕込めるはずだ。そうしてこそウェブで申し込みできるようにする意味だと,筆者は思うのだが。そんな仕組みのないまま「ウェブで申し込みを受け付けるようにした」ということは,「その申し込みの内容が正しいかどうか確認する」という手間を大幅に増やしただけだ。時として,今どきのお役所のやり方は,筆者の考える「コンピュータを使う意味」と「まったく逆ではないか」と思うことがある。
ついでに言うと,申し込み後ブラウザを閉じてしまうと,場合によっては申し込んだ内容の画面を二度と見れなくなるらしい。後からは何も確認できない仕様だ。で,いざ接種を始めたら,連絡せずに「ただ来ない」という「ドタキャン」が多数発生したとか。中には「下手な鉄砲」式に何件も申し込んだ人もいるかもしれないが,ブラウザを閉じると,いつどこに接種に行けばいいのか確認できなくなるようなシステムに,責任が「一切ない」と言えるかどうか,考えたほうがいいように思う。まぁ「考えられなかったから」そうしたシステムになったのだろうが。
というわけで,今どきのコンピュータやウェブの使われ方は,筆者の考えとは相容れない面を感じることがある。
筆者がこんなシステム開発に携わったら,「おかしいでしょ」と言っちゃうね。ただ,そう主張すると,「お前は指示に従えないのか!?」と言われ,パワハラ受けるか追い出されるかになるだろう。もうしばらくは「コロナニート」でいるしかないのだろうか。
● 水平タブ: 次の字の開始位置を右の特定位置に(ワープロ等)
多くは [TAB] キーを押した時,文字コードの9が入力される。ASCII
コードの9は HT(水平タブ→Horizontal Tabulation)と呼ばれるコントロール(制御)コードで,「次に印字する文字を現在位置より右にある特定位置からにする」的な意味を持つ。空白に似た扱いになる。
「表示は文字だけ」だった昔のコンピュータでは,「特定位置」とは固定文字幅の「8文字分の幅」の扱いが多かった。画面左端から8文字幅分ごとの位置に「タブ」が設定されていて,[TAB] キーを押す度にその位置まで空白になる。たとえば,既に1文字表示されているところで
[TAB] キーを押すと7文字分の空白になり,2文字表示されている位置なら6文字分,3文字なら5文字分……の空白の扱いだった。
今のパソコンでも,「ターミナル」と呼ばれる文字のやりとりだけをするためのソフトでは,多くは同じ扱いになる。また,コンピュータのプログラム作成で使われる「エディタ」と呼ばれるソフト(「メモ帳」に近いもの)では,同様に8文字分の幅の水平タブとして機能するものが多いが,幅を指定できるソフトもある。
◆ 昔のプリンタの思い出
「プリンタ」と言えば,今でこそパソコン本体内に様々なフォントを持ち,その形をプリンタに送り込んで印字する方式だが,昔のプリンタは,文字コードを受け取って,その文字を印字する仕組みだった。そのため,プリンタの持つフォントがキレイかどうかが全てだったりした。もちろん,この「水平タブ」のコードも,直接送り込まれる。そこで,空白が空いてくれるかというと……そうもいかなかった。
「フラッシュメモリー」というものが無かった頃,半導体の「メモリ(記憶装置)」と言えば,記憶の維持に電源が必要だった。そのため,昔のプリンタではこの「水平タブ(HT)」の幅の設定をしても,電源を切ると記憶させたものが揮発して消えてしまっていた。電源オフにより消えてしまうわけだから,電源投入直後,この「水平タブ(HT)」の幅の設定をしないままでは,画面では HT コードで空白が表示される文字データファイルでも,そのままプリンタに送ると空白は空かず,文字が全てくっ付いて印刷されてしまったりしていた。画面と同じ印刷結果を得たい場合,電源を入れる度に使用者がタブ設定をする必要があった。その設定が面倒だったためか,たいていの人は印刷ごとに「タブを空白に置き換えるツール」を使っていたと思う。筆者は,画面同様「8文字ずつ」タブ位置を設定するデータをプリンタに送り込むツールを自作した。それをプリンタの電源投入直後に1回実行すれば HT コードで空白が空くようになる。つまり「空白に置き換えるツール」が不要になるから,あとはタブを含むファイルを直接プリンタ・デバイスに「リダイレクト」などで送り込むだけで,画面表示とほぼ同じ印刷結果を得られて便利だった。気が付けば,周りがみんなそのツールを使うようになっていたのも,遠い昔の話。コンピュータというのは「手間を削減するための道具」であるべきなのである。
◆ ワープロの「水平タブ」
ワープロでは,前述「エディタ」などより高度な設定が可能になる。「×文字分ずつ」という固定した幅ではなく,「最初は左端から×cm,2番目は左端から○cm,……」といった自由な指定ができる。
また,前述の「エディタ」などのタブは,次の文字の「開始位置」の指定であるため,タブ位置では「左端」を揃えることしかできないが,ワープロでは「右寄せ」のタブ設定も可能になる。他にも「中央寄せ」とか「小数点揃え」といったタブが使える場合があり,それぞれ中央や小数点位置が揃うようになる。
以下の画像は筆者が使うワープロソフト(OpenOffice Writer)で,「新規作成」の直後に,数字と [TAB] を交互に打ち込んだ時のもの。ルーラー部分にある小さな「逆 T の字」のマークが,デフォルト……つまり既定設定の水平タブ位置で,左端から 1.25cm ずつの位置になっている。そのため数字も 1.25cm の間隔で並ぶ。
▼ 既定の水平タブ位置 |
本来「水平タブ」というのは空白同様「見えない文字コード」だが,ワープロソフトではそれを見えるようにする設定ができるため,画像ではそうしている。画像で右向きの矢印(→)が「水平タブ」を表していて,数字と数字の間に1つずつあるとわかる。文字は「1つ」でも空白の幅が通常のスペースより大きいことがお分かりいただけるだろうか。
ちなみに行末の「¶」記号は「ピルクロウ」と呼ばれるもので,段落の境目を意味する。これも水平タブ同様,通常「見えない文字」扱いのため,印刷されない。このワープロでは「段落の行末」を表している。
ワープロの場合,このタブ位置は「書式 > 段落」の指定などで自由に設定できることが多い。試しに,文字の印字領域いっぱいの 17cm の位置に「右寄せ」の水平タブを設定してみる。設定画面はこちら。
▼ 文字範囲いっぱいに「右寄せ」タブ指定 |
その設定をした行で以下の操作をする。([TAB] は [TAB] キー)
各位 [TAB] 6 月 12 日 [ENTER]
すると,左端に「各位」が,右端に日付が表示される。「左寄せ」と「右寄せ」の書式を一行に混在させることができる。
▼ 同じ行に左寄せと右寄せが混在 |
この「タブ機能」を使わず同様な書式を実現しようとすると,左寄りの文字と右端に寄せたい文字の間に空白を詰め込む方法くらいになる。でもそれでは,かなりの数を打ち込む必要がある。また空白は「幅」があるため,その幅単位でしか調整できず,右端をピッタリ希望の位置に揃えるのはむずかしい。複数行を全て空白で対応すると,微妙に右端が揃わないままになったりする。しかも,字体や文字の大きさを変更するとほぼ確実にズレる。その度に空白の数を調整する必要が生じる。
「右寄せ」のタブ設定をすれば,これらが [TAB] キー1つで解決。「右寄せ」のためにいくつも空白を打ち込んだり,字体や大きさの変更によって「文書全体」の空白の数を再調整する手間が全て不要になる。
「行の右寄せ」とどう違うのか。それは「行の右寄せ」では,1行の幅が変化した時も必ず「右端」に表示されるのに対し,「右寄せタブ」は「左端からの位置」に右端を揃えるので,たとえば用紙が変更され,行の幅が広がっても,必ず「左端から 17cm」の位置に来る。逆に狭くなった場合,状況によっては書式が乱れることがあるので注意。
「『もくじ』で使えるのでは?」と気付いた方もいるかもしれない。そう,「もくじ」では,多くは「見出しの文言」は左寄せに,「ページ番号」は右寄せの書式にする。が,自分で作った「もくじ」ではページ番号の右端が揃わない……と嘆いていた方もいるのではないだろうか。そこでこの「右寄せタブ」が使える……と! 思ったら「小間違い」。「大間違い」とまで行かないが,そのやり方は「ちょっと待った!」と言いたい。というのは,ワープロアプリには,「もくじ」を自動生成する機能が備わっているため。その自動生成された「もくじ」の書式に,「右寄せタブ」でページ番号を表示するよう既定で設定されていることが多い。だから,わざわざページ番号に「右寄せタブ」を設定するよりも,「もくじ」を自動生成させる方法を覚えたほうが早いというわけ。ただ,その機能を使うためには「スタイル編集」という編集方式をする必要がある。その方法については,以下の記事を参照。
コンピュータというのは「手間を削減するための道具」であるべきなのである。