この記事は旧記事の整理用再掲です。概要と応用例を記載します。
● 概要
押しボタンなどのスイッチを「押す」とか,楽器やおもちゃなど,軽く「叩く」ような行為を,スイッチで実現する装置。操作対象である押しボタンやおもちゃなどの改造が不要で,また特殊な部品も使わず,どこでも,安価に手に入るものの組み合わせで,多くの人が簡単に作れるよう解説します。
主な特徴は以下のとおり。
- 材料費 ¥500 程度。
- 製作時間:1~2時間。
- 特殊な材料は不使用。百円均一店か模型屋(模型を扱っている玩具店),ホームセンターなどで入手可能。
- 広く応用が利く……デジカメなどのシャッター / 家電やパソコンの主電源 /[Fn]などの特殊なキー操作 / 楽器を鳴らす / おもちゃで遊ぶ
● はじめに
「介護」の現場などで,「ちょっとした操作がスイッチでできれば……」と思うことってありませんか。たとえば,家電やパソコンの「主電源スイッチ」,カメラのシャッターボタン,介護用ベッドの「寝返り」ボタン,「押す/叩く」といった単純な動作で遊ぶおもちゃ……などなど。被介護者本人には随意的に動かせる部分があっても,それが「押しボタン」などを直接押せる動きではないがために,わざわざ介護者を呼んで,たった1つ「押す」という行為をしてもらわないとイケナイ……。介護する側にとっては「仕方のないこと」と割り切っていたとしても,事情のわからない子供でもない限り,被介護者にとっては,心的負担になっていることもあるのではないでしょうか。
それを「福祉機器」で実現しようとすると……たいへん高価な装置ばかり提示されます。なぜかと言えば,メーカーは「大量生産」しますから,その分,多くの人に買ってもらえるように「いろいろな機能」を付加するので,その設計にかかった「コスト」も全て盛り込まれているためでしょう。もちろん,「たった1つの機能さえ使えればいい」目的の実現には,たいへんムダな出費です。でも,そういった単機能的な要望は多種多様なため,特定の機能にしぼると需要もカクンと減ってしまい,大量生産では採算が合わなくなります。というわけで,そのような個別の需要には対応できないのが,介護機器メーカーの実情というところでしょう。
でも「心的負担」か「経済的負担」かのどちらをとるか……なんて話では,悲しいと思いませんか。
だからと言って,「大量生産」が利かないものを,メーカーに求めることはできません。ではどうするかというと……そりゃ「自分で作る」しかないでしょう。なンて言うと,
「私にゃ無理に決まってる!」
といった声が聞こえてきそうですが,ちょっと待ってください。まず,こちらの写真をご覧ください。
▼ Wary-Basher |
見たところで「コレは一体何をするモノ?」と思われているかもしれません。モチロンこれが,最初に述べたような「押す/叩くといった単純動作をスイッチで実現する装置」です。「どんなに頑張っても作れない」ように見えますでしょうか。ひょっとすると,工作好きの方は,この写真を見ただけで,「なるほど! これなら作れる!」と思っているかもしれませんね。実際にコレで,カメラのシャッターを押したり,おもちゃの楽器を鳴らしたり,指で遊ぶゲームをしたりしているのです。具体例は,次節「応用」をご覧ください。
「自作」をあきらめてしまう理由は何でしょうか。時間がない,お金がない,それ以前に「部品」が手に入らない……いろいろと挙げられるかと思いますが,総合すればただ1つ,「(部品入手の段階も含め)簡単に作る方法がない」からだと思います。
たとえば「押す/叩く」といった機能の装置に使われる部品というと,少しは「ラジコン」などをいじった経験のある方でしたら,「ソレノイド」とか「サーボ」といったものを思い浮かべるかもしれません。でも,「何それ?」と感じた方がほとんどでしょう。実際,そういった部品は,秋葉原や「ラジコンの専門店」のようなお店でないと入手できません。しかも,それなりに高価で,数百円~数千円するのに加えて,「駆動回路」のようなものが別に必要だったり,多くの電池が必要で全体が重くなる……など,とにかく気軽に使えるシロモノではありません。これでは,たとえ「ラジコン」をいじった経験のある方でも,そう簡単に「作ろう!」という気にはならないでしょう。
でも,どこででも安価に手に入るもので,多くの人が簡単に作れたらどうでしょうか。ここでは,「秋葉原」も「東急ハンズ」も必要なく,組み立てもせいぜい2時間,乾電池1~2個で使える,「指」の代わりをする装置をご紹介したいと思います。
● 応用
とはいえ,「どのように使うのか」が分からないと,前掲の写真が,実際に「押したり叩いたりできる」ものであるかどうかなど分からないと思いますので,いくつかご紹介します。
◆ 「押す」……デジカメ
▼ デジカメのシャッターを押す |
応用製作の「スタンド型」に製作したものの使用例。長~いコードで使うと,昔の「レリーズ」代わりになりますよね。じつはこれは,横でスイッチを押し,被写体のデジカメ自身で撮りました。「どーやって?」……「自画像」って,何を見て描きますぅ?
◆ 「押す」……主電源
「リモコン付き」の機器には,それ用の「環境制御装置」もありますが,リモコンがない装置では使えません。いや,たとえリモコンが使えても,「主電源」が切られていたら,誰かに入れてもらう必要があります。簡単な家電機器ならコンセントで制御できる場合もありますが,パソコンが「フリーズ」した時などは,どうしても電源スイッチを押す必要があります。
▼ パソコンの主電源を押す |
写真は,側面に電源スイッチのあるノートパソコンで使う場合の例。写真では,使い方の原理を示すために「置いただけ」ですが,実用的には,電源スイッチが押された時に,装置が動かないよう固定しておく必要があります。専用の「パソコン台」が必要な方などは,台に「備え付け」で製作してもいいかもしれません。
なお,電源スイッチが「側面」ではなく,モニタ・パネルを開けた「キーボードの奥」についている場合などは,かなり「工夫」が必要です。
◆ 「押す」……パソコンのキー
最近のパソコンは,それなりに「ユーザー補助」機能もあり,[SHIFT]キーなどの「押しながら」操作も一本指でできるような設定が用意されていますが,時としてその対象外とされているキーもあります。ノート・パソコンや,小型のキーボードにある[Fn]キーがそれで,多くのものは「ユーザー補助機能」が効きません。つまり,一本指では操作できない場合があります。
▼ パソコンのキーの「押しながら……」を実現 |
そんな時,この装置を写真のようにセットし,数秒程度のタイマーやラッチ機能のついたスイッチなどで動作させると,一定時間押されているようにしたり,あるいはスイッチ操作の度に,「キーを押す/放す」を切替えたりすることができます。写真は,ちょうど「押されている」状態です。
◆ 「押す」……オルタネイト・スイッチ
▼ オルタネイトタイプの押しボタンを操作する |
前述「主電源」と似たような使い方ですが,「オルタネイト(押す度にオン/オフが切り替わる)タイプ」のスイッチを,この装置で押すように配置すると,通常の「モーメンタリ(押している間だけオン)」となるスイッチで,その機能を使うことができます。写真は,加工した「タッチ・スイッチ」の使用例。
◆ 「押す」……リモコン
▼ リモコンの操作 |
応用製作の「スタンド型」に製作したものの使用例。写真は「電源ボタン」を押して,TV の操作ランプが点灯したところ。もちろん,TV やオーディオ機器のリモコンだけではなく,動けない人用の電動ベッドの「寝返りボタン」などでもいいわけです。
◆ 「振る」……楽器その1「鈴」
▼ 鈴を鳴らす |
割箸がいちばん激しく動くところに,輪ゴムで巻いてみました。スイッチによって鈴が振られ,なかなか「ハデ」な音を出します。「呼び鈴」代わりにもなるかもしれません。
◆ 「叩く」……楽器その2「木琴」
▼ 木琴を叩く |
見るからに「楽器」としての役はあまり果たせそうにない木琴。「撮影用」でなきゃ買いませんね。でも,ちゃんと音は鳴ります。これも,上記「鈴」と同じように,輪ゴムでバチを巻きつけました。ただこの手の「叩く」楽器は,ギリギリでバチの先が着かない程度の位置にセットします。「ゴム」に弾力があるので「勢い」でバチが当たり,押しっぱなしでもくっ着いていないので,いい音が出ます。
もちろん「木琴」に限らず,「バチ」で叩くものであれば「太鼓」や「鐘」でもいいワケです。「三味線」は無理だと思いますが。
◆ 「叩く」……楽器その3「カスタネット」
▼ カスタネットを叩く |
「カメラ」の例で使った部分で,カスタネットを押すようにしています。
カスタネットのような楽器は,本来,こんなふうに「押しつける」のでは「いい音」は出ませんが,とりあえず「音を出す」という目的は果たせてます。
下にあるブルーのシートは「滑り止め」です。
◆ 「叩く」……おもちゃ「バスケットボールゲーム」
これはなかなかおもしろい応用でしょう。軽いスイッチで使えば,チカラの弱い人も,フツーの人と対等に遊べます。下の写真は,中の青い玉が飛んだ瞬間です。撮るの苦労したっス。
▼ バスケットボールゲーム1 |
▼ バスケットボールゲーム2(中の玉が飛んだところ) |