「あとから変えられる」日本語変換の便利機能


公開 (UL): 2019-06-21
更新 (UD): 2019-06-21
閲覧 (DL): 2020-10-27

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 筆者にはパソコン指導をしている方が何人かいるのだが,その中に,「うまく喋れない」障害を持った方がいる。電話が使えないため,その方のお母様は,日頃の連絡をメールで受けたいと考えているようなのだが,本人が自分からメールで連絡することはあまりないようで,お母様も困り気味。そもそも文章自体あまり書きたがらないような感じ。ところが筆者がある操作を教えたところ,突然「やる気」を出しちゃって,メールや長い文も書き始め,お母様も大喜び……なんてことがあった。
 とは言え,教えたのは別に特殊なことでも何でもない。それは「入力モードを変えずに英数字を入力する方法」。
 じつはその方,前任のパソコン指導者の方針だったのか何なのか,どういうわけか「英数」というキーで「かな文字と英数字の入力切替」をしていた。だけどそのキー,そうした切り替えに使うには標準的ではないうえ,うっかり [Shift] キーが押しっぱなし状態のままそのキーを押すと,日本語に関係のない CapsLock(キャピタルロック,あるいはキャップスロック)という機能が働き,うまく切り替えられない。実際にその方,前述の方法を伝える前まで,「かな文字と英数字」をうまく切り替えられず,日本語の普通の文章を書くべき箇所が意味不明な英文字になったり,逆に日付の数字を入れたいのに「かな文字」を書いてしまったりで,何度も修正を余儀なくされることが多く,短い文章を打つにもかなりの時間がかかっていた。もしかすると,それが「あまり文章を書きたがらない」一因だったのかもしれない。
 当初した指導は,「英数」キーではなく「ひらがな/カタカナ」キーで「かな入力モード」に戻すように指示したのだが,どうやら「英数」を押す操作が染み付いてしまったようで,なかなか従ってもらえなかった。でもそのままではあまりにも効率が悪いため,別の方法……つまり「入力モードを変えずに英数字を入力する方法」を伝えたというわけ。
 途端に状況が一変! まずあれほど変えなかった「英数」キーを押す操作がほとんどなくなった。まぁそれは「モードを切り替えずに済む」ようになったのだから,当然なのかもしれないが。ただ,そのおかげで「修正」がぐんと減り,今までたいして長くない文章でもずいぶん時間をかけていたのが,同じ時間でかなり長い文章を打てるようになった。つまり,効率が格段に上がったのだ。お母様もたいへん喜んでいた。

 ここでは,その方法を紹介するとともに,ついでにそれ以外でも日本語入力時に便利そうなキー操作についても説明したい。

● 入力モードを変えずに英数字を入力する方法

 じつはその「喋れない」という方は,「かな配列」でパソコンを使っている。ただ,今から紹介する方法は,「かな配列」打ちでも「ローマ字入力」でも有効な方法なので,知っておいて損はないと思う。
 もしローマ字入力に「いいところ」があるとすれば,それは「数字」や「括弧」などの記号が,モード切り替えせずに打てるという点。書いている文章中に「日付」や「金額」がある程度頻繁に出てくるような時は便利かもしれない。おそらく,ローマ字入力をしている人は,それを理由に続けている可能性もあると思う。
 ただそれも,これから述べる方法を知れば,理由にならなくなる。

 その方法とは,[F9] または [F10] のキーを押すと,打った字が英数字になるというもの。[F9] だと「全角」,[F10] は「半角」になる。

 ローマ字入力の場合も「アルファベット」を入れたい時は,たとえば「NPO」と入力したい時に「ENUPI-O-(えぬぴーおー)」と入力したり,または「変換モードを一旦『英数モード』にしなければいけない」と思っている人も多いかもしれないが,述べたような変換の操作なら,打つキーを変える必要もなければ,「モード切り替え」の必要もない。そのキーに元々割り当てられている字のキーを打っておき,得られる字をあとで変えることができる。こんな感じ。

 [N] [P] [O]→ んぽ
  [F9]→ npo →[F9]→ NPO →[F9]→ Npo →(繰り返し)
  [F10]→ npo →[F10]→ NPO →[F10]→ Npo →(繰り返し)

 [Shift] を押しながら打てば,最初から「NPO」と大文字になる。
 他の例としては,こんな感じ。

 [Y] [O] [U] [T] [U] [B] [E]→ ようつべ
  [F9]→ youtube →[F9]→ YOUTUBE →(以下同)
  [F10]→ youtube →[F10]→ YOUTUBE →(以下同)

 かな入力で使うと,こんな感じ。ひらがなの「み」のキーは「N」,「せ」は「P」,「ら」は「O」と同じキーに相当する。以下同様。

 [Nみ] [Pせ] [Oら]→ みせら
  [F9]→ npo →[F9]→ NPO →(以下同)
  [F10]→ npo →[F10]→ NPO →(以下同)

 Youtube の場合は……。

 [Yん] [Oら] [Uな] [Tか] [Uな] [Bこ] [Eい]→ んらなかなこい
  [F9]→ youtube →[F9]→ YOUTUBE →(以下同)
  [F10]→ youtube →[F10]→ YOUTUBE →(以下同)

 「かな入力」している方に伝えたら,格段に効率が上がったと述べたように,この方法は「かな入力」で特に威力を発揮する。
 かな配列では,数字や英記号キーにも「かな文字」が割り当てられているため,それらのキーを打ってもそのままでは「かな文字」が出てしまう。そこで一旦「英数モード」にしてしまうと,また「かなモード」に戻さないといけなくなるが,述べている方法ならばその必要がない。やはり元から割り当てられた字のキーをそのまま打っておき,得られる字をあとで変えることができる。
 たとえば「¥12,000」という金額を入れたい時は……。

 ーぬふねわわわ →[F10]→ ¥12,000 →[F9]→ ¥12,000

 この方法を知らない人は,どうやって数字を入れていたのだろうかと思う。「えんいちまんにせん」と打っていたのだろうか。でも,コンマは自動で入らないだろうし……まぁ,テンキーが付いているキーボードなら,ある程度は何とかなっていたかもしれないが。
 括弧を使いたい時も……。(3番めの例の ゜ は半濁点)

 ゅみせらょ →[F9]→[F9]→ (NPO)
 ゅみらかいほぬょ →[F10]→ (note-1)
 ゜のるのむ →[F10]→[F10]→ [K.K]

 疑問符(?)を入れたい時は……。

 らの [Shift]+[め]→ らの・ →[F9]→[F9]→[F9]→ Ok?

 「日付」なんかは超便利! オリンピック開始日は……。

 ふわふわ →[F10]→ 2020
 ねん →[変換]→ 年
 や →[F10]→ 7
 がつ →[変換]→ 月
 ふふ →[F10]→ 22
 にち →[変換]→ 日

 これが「ローマ字入力」だと,「年→nen,月→gatu,日→niti」のように,打つキーが多くなる。
 年月日を斜線で区切る場合はこう。

 ふわふわめわやめふふ →[F10]→ 2020/07/22

 この「め」は斜線(/)と同じキー。区切る字がハイフン(-)ならここを「ほ」に,点(ピリオド)なら「る」にすればいいワケ。

 ちなみに「[Ctrl]+ 一般の英字キー」の一部に同様な機能がある。

 筆者はどちらかというと,こちらのキー操作をよく使う。何となくだが,たぶん,キーが遠くないので,タッチタイピングの時,離れた位置まで手を移動する必要がなく,打ち易いからだと思う。

 この方法を教えた方には,教えたあと,その「英数」のキーに「ここは押さない」と書いたシールを貼り付けた。モード切り替えの必要がないので,日本語モードにする時以外は「ひらがな/カタカナ」のキーも押す必要がなくなった。
 そして筆者は,その方の持っているノートにこの変換方法を書いておいてあげたのだが,そしたらその方,そのページを開いたまま机の引き出しに入れ,いつでも見れるようにしながら,パソコンで文章を書いていたと,あとでお母様から聞いた。よほどその方にとって役立つものと感じたのだろう。

 この変換方法は,「ローマ字入力の利点」と思われていることさえ無意味にするんじゃないかって気がしている。
 世間は「ローマ字入力」が主流のようだが,筆者に言わせると,なんでそんな打鍵数の多い面倒な入力方法を使っているのだか疑問。ただ,ローマ字入力をしている人に言わせると,英数字や英記号や括弧などの記号が,切り替え不要で入力し易いという主張もあるのかもしれない。
 「かな配列」で打っている場合,英数字を入れたい時に,多くの人が「一旦『英数モード』にして,入力したい英数字を打ち込んだら『かなモード』に戻さなければいけない」と思っていて,「そんな面倒くさい『かな入力』なんか使えるかよ!」と言いたいところだろうが,述べた方法なら,見て分かるとおり「変換」の手間的にはローマ字入力とほとんど変わらない。となると,かな入力のほうがローマ字よりも全体的な打鍵数が少なくて済む分,効率がいいことになる。
 冒頭でご紹介した「かな入力」の方が,突然「やる気」を出した気持ちが分かるような気がしないだろうか。

 筆者はかなり以前から「かな入力」をしていた。「ローマ字入力派」が,いくら「英数とその記号が入れ易い」などと主張しても,打鍵数の多いローマ字入力はデメリットしか感じなかった。それは,こういった「切り替えの必要のない」簡単な英数字の入力方法を知っていたことも大きいと思う。

● これ以外の変換操作

 述べてきたものと共に,他にも便利に使えそうな操作をまとめてみた(いずれも「IME スタンダード」の場合)。

● 一時英数字モード

 それでも,「日本語と英語の混合文ではローマ字入力が有利だ!」との主張もあるかもしれない。しかし! この操作をご存知だろうか。

[Shift] キーだけ押して直ぐ離す

 じつは,この操作直後は「英数字入力モード」にする設定ができる。その設定が効いていれば,直後からキーボードを打つと,全て英数字が入力できる。利点は「スペースキーで半角スペースが入力できる(変換操作にならない)」という点。つまり「英文」が普通に入力できるようになる。
 で! 「決定(Enter)」を押すと「かな入力モード」に自動で戻る。「日本語,英語混合文」には,ばつぐんに適した入力方法だと思う。

 以下は「IME スタンダード」という日本語入力機能での設定画面。

● もう「ローマ字入力」はやめたほうがいいと思う

 筆者は何人かにパソコンの指導をしているが,多くは「かな入力」をしている。世間的には「ローマ字入力」のほうが多く使われているようだが,筆者の周囲では少数派。むしろなるべく「かな入力」するように指導している。なぜなら,まず「1キー入力=1かな文字」のため分かり易い。また,指導相手には何人か障害を持っている方がいるのだが,そうした方の場合,1つキーを打つにも時間がかかることがあるので,ローマ字と比較すれば打つ回数が格段に少なくて済む「かな入力」は,時間の節約にもなる。

 それと,「ローマ字入力」は「打ち間違い」が多いような気がする。
 指導のお相手の中に,ヘッドギアからカブトムシのツノのように棒が突き出た「ヘッドバー」と呼ばれるものをかぶり,その棒でキーボードを打っている方がいる。残念ながらその方は「ローマ字入力」で,キーを一つ打つにも割と時間がかかるのに,間違いが多く,その間違いの修正のためにさらに時間がかかる。ヘッドバーで打つ人の場合,キーボードに慣れてくると「あまり画面を見ずに」打つようになる傾向がある。それでも,1文字ずつ画面を見て確認しながら打つなら,間違えた時は「1文字」修正すれば済むが,見ずに打つクセがついてしまうと,1つ入力を間違えると,それ以降が正しくても,意味不明なアルファベットの羅列になってしまい,そうなると修正する文字が「1文字」では済まなくなるうえ,1文字にキーを2つ打つ必要のある「かな文字」も多いので,修正に益々時間がかかる。
 パソコン指導の前任者や周囲の方がローマ字入力だったためなのか,教え易くしようとしてローマ字に慣れさせたのかもしれないが,効率としては,どう考えても逆効果。しかし残念ながら,もうローマ字に慣れてしまったためか,本人も「かな入力」にしたいとは思わないらしい。

 「ローマ字入力」で打ち間違いが多いのは,別に障害者に限った話でもない。ウェブ記事でも,たまに意味不明な言い回しの文を見かける。おそらく,母音か子音のどちらかを間違えて打って,そのままにしてしまったと思われるような間違え方だ。
 筆者は,「もうローマ字入力なんて止めるべきなんじゃないか」って思っている。少なくとも「障害者向け」には。理由は述べたとおりで,キーを1つ打つのにたいへんな思いをする方々に,かな文字1つのためにキーを2~3回打つ必要を強いるべきではないんじゃないかって話。

 では「かな入力」がベストなのかというと……あまり強く言えない。過去,得意気に「かな入力」をしてたら,ひどい腱鞘炎になってしまって……。どうも,濁点(゛)や,助詞の「を,へ」,長音(ー),かぎ括弧などの,けっこう頻繁に使うキーが全て右の小指に集中し,しかも離れているうえ,拗音(ゃゅょ),促音(っ)の入力に使う「シフト」もまた小指を酷使する……その辺りが原因だったような気がしている。
 というわけで,筆者は現在は「かな入力」は使っていない。もちろんローマ字入力は論外。では何を使っているかというと,NICOLA と呼ばれる配列を使っている。別名「親指シフト配列」。既に特許は切れているようで,Linux などのシステムでは,無料で使えるようにもできる。今のところ,文章を多く書く人は断然これだと思っている。かといって「親指シフト専用キーボード」など簡単には手に入らないので,一般的なキーボードで使うことになる。すると当然ながら,入力される文字はキー上面に刻印されている字と異なるので,完全に「タッチタイピング(キーボードを見ずに打つ)」を目指す人向けだけど。でも,それは同時に「高効率化」の要因でもある。ただまぁ,「障害者向けではない」ことは確かだが。

 「先進国」と呼ばれる国の中で,「日本人の生産効率は最下位」と,かなり長い間言われ続けている。要因はいろいろとあるだろうが,一旦「ローマ字入力でいくぜ~」と決めたら,これっぽっちも見直さないという姿勢……それは何となく,国策で「やる」と決めた計画は,たとえ「ダメな要因」が見えてきても「やる」……それに似たものを感じる。「国民病」なのですかねぇ。



© M.Ishikawa; TREEWARE 2020.